
1967〜71年に製造された3代目クラウンは、「黒塗りの公用車」のイメージを打破し、日本の高級車市場の概念を覆した歴史的なクルマだ。「白いクラウン」のフレーズでマイカー族を刺激し、欧州調デザインで苦戦する最大のライバル・日産セドリックを販売面で大きくリードした。1968年には2ドア・ハードトップを追加。ペリメーター・フレームによる低重心化に加え、名機「M型」6気筒エンジンや前輪ディスクブレーキを搭載し走りと安全性を両立。パワーウインドウ等の先進装備やお買い得な「オーナーデラックス」の投入で、個人向け高級車という新ジャンルを確立した。
●文:月刊自家用車編集部
明るく洗練された白いボディカラーを前面に押し出したプロモーションは一世を風靡した
1967年に登場した3代目クラウン(MS51系)は、日本の自動車史において非常に重要な転換点となったモデルだ。それまでのクラウンといえば、「黒塗りの公用車」あるいは「企業の役員用社用車」というイメージが定着していた。しかし、日本の経済成長に伴い、一般の個人ユーザーが自らステアリングを握る「マイカー時代」が本格化しつつあった。
そこでトヨタは、ターゲットを個人ユーザーへと大きく広げる戦略に出たのだ。その象徴が、「白いクラウン」という有名なキャッチフレーズで登場した3代目クラウンだった。黒=公用車という常識を覆し、明るく洗練された白いボディカラーを前面に押し出したプロモーションは一世を風靡し、豊かさを求める当時のマイカー族の心を強烈に刺激した。
1968年に追加だれた2ドアハードトップは、それまで黒塗りの高級車が多かったところに、白をメインカラーとしオーナー向けという新しい価値観を持つところに斬新さがあった。
直線基調でワイド&ローを強調したアメリカンテイストのデザインを採用
当時の日本の高級車市場は、最大のライバルである日産セドリック(およびプリンス・グロリア)との熾烈なシェア争いの最中にあった。日産は1965年に登場した2代目セドリック(130型)で、ピニンファリーナのデザインによる欧州調の「フローイングライン」を採用していた。
しかし、この前下がりのデザインは日本の保守的な高級車ユーザーから「車格が小さく見えて威厳がない」と敬遠され、販売面で苦戦を強いられていた。 これに対し、3代目クラウンは直線基調でワイド&ローを強調したアメリカンテイストのデザインを採用。これが「風格があり、堂々としている」と高く評価されたのだ。結果として3代目クラウンはセドリックを販売台数で圧倒し、日本の高級車市場におけるクラウンの絶対的な王者としての地位を不動のものとした。
専用の角形2灯式ヘッドライトを採用し、パーソナルな雰囲気が色濃く反映されていた2ドア・ハードトップ
個人ユーザーへのアピールを強調するかのように、1968年からはスタイリッシュな「2ドア・ハードトップ」が追加されている。引き締まり感を強めたボディラインと、専用の角形2灯式ヘッドライトが醸し出すフロントビューには、パーソナルな雰囲気が色濃く反映されていた。
このモデルは実質的に2ドア・セダンとしての実用性も備えており、セダンの「S」グレードが担っていたスポーティーな役割は、このハードトップ「SL」へとバトンタッチされている。 個人向けには、上級グレードに近い充実した装備を持ちながら価格を抑えた「オーナーデラックス」もラインナップされていた。
一方で、高級車に「偉そうな重量感」を求める保守的な層の声も根強く、1969年からのセダンモデルでは、フロントマスクをあえて重厚で少しクラシカルな顔立ちへと意図的に変更しているのだ。
1966 年に完成したデザイン・ドームから生まれた最初のクルマで機能重視から生まれた「日本の美」を追求。より低く、長く、安定感を増したという。セダンとは異なり、角型2灯式ヘッドライトを採用した。
1968 年からの米国安全基準20 項目中、エネルギー吸収ステアリング以外全て満たし、さらに16 項目にわたる独自の安全設計が盛り込まれた。
クラウン4ドアセダンは、丸目4灯を採用。1969年のマイナーチェンジでは、さらに重厚なフロントマスクに変更されている。
静粛性と滑らかな回転フィールを誇る名機「M型」直列6気筒SOHCエンジンを搭載
機構面では、その後長きにわたりクラウンの特徴となる「ペリメーター・フレーム」が採用されている。モノコック構造に近い特性を持ちながら路面からの騒音遮断に極めて有効で、床面を低く抑えることで低重心化と室内のヘッドルーム(頭上空間)拡大を両立させることができたのだ。
心臓部には、静粛性と滑らかな回転フィールを誇る名機「M型」直列6気筒SOHCエンジン(2.0L)を搭載。スポーティーグレードの「SL」にはSU型ツインキャブレターを備えて出力を高め、後には排気量を拡大した2.3Lモデルも追加された。
トランスミッションは3速コラムMTを基本としつつ、オーバードライブ付きMT、4速フロアシフトMTに加え、「トヨグライド」と呼ばれた2速コラムATや3速AT(コラム/フロア)など、多彩な選択肢が用意されていた。
サスペンションは前輪にダブルウィッシュボーン、後輪に5リンク・コイルを採用。その操縦性は非常に柔らかいものだったが、パワーステアリングの設定と相まって、まるで当時のアメリカ車のようなゆったりとした乗り味を実現していたのだ。
6 気筒系がM 型、4 気筒系が5R型が搭載された。またサービス・フリー化が追求され、2 年または4 万kmエンジン無調整と冷却水無交換
(スーパーDX/ デラックス以上)が特徴だった。
トランスミッションの種類も豊富になり4 段のフロアシフトも設定された。ステアリングギアはリサーキュレーティング・ボール式で可変ギア比で据えきり、低速時には軽く、高速時にはシャープに操作できた。
現代に通じる安全装備や豪華な電装品がいち早く取り入れられた先進的な車でもあった
3代目クラウンは、現代に通じる安全装備や豪華な電装品がいち早く取り入れられた先進的な車でもあったのだ。高速化する交通事情に対応するため、制動力を飛躍的に高める前輪ディスクブレーキが上位グレードに標準装備されたほか、万が一の衝突時にステアリングシャフトが潰れてドライバーの胸部への衝撃を和らげる「衝撃吸収式ステアリングコラム」をいち早く採用し、安全性を大きく向上させた。
車内空間の快適性も格段に進化しているのも特徴だ。パワーウインドウや電磁式ドアロック(集中ドアロック)といった当時の最先端機能が惜しみなく投入され、後部座席からラジオや音量を操作できるリア・オーディオコントロール、8トラック式カーステレオなども設定。パーソナルラグジュアリーとしての空間作りが徹底されていた。
この時代からセンターピラーを持たないハードトップが大流行したが、皮肉なことに時を同じくして冷房(カークーラー)などの空調装備が一般化し、窓を全開にして走る機会そのものが減少していった。セダンの「スーパーデラックス」において、それまで換気に必須とされた開閉式のフロント三角窓が廃止されたのも、こうした空調設備の進化と時代の移り変わりを象徴する出来事である。
王道のセダン、流麗なハードトップに加え、カスタム(ワゴン)、バン、ピックアップまで、クラウンの名のもとに史上最も多くのボディタイプが揃い、日本のモータリゼーションの成熟を牽引した歴史的傑作と言えるクラウンなのだ。
Specification(クラウン2ドアクーペ/1968年)
〇全長× 全幅× 全高 : 4610×1690×1420mm〇ホイールベース : 2690mm〇車両重量 : 1295kg〇排気量 : 1988cc水冷直6OHC〇最高出力 : 125PS/5,800rpm〇最大トルク : 16.5kgm/3800rpm〇3 速フロアシフトAT
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