
トヨタの豊田章男会長が、自らニュルブルクリンク24時間耐久レースを走り抜き、その情熱と知見を注ぎ込んだ「GRヤリス MORIZO RR」が登場した。世界最速レベルの変速を誇るDATや専用の「MORIZOモード」を搭載し、レースの過酷さを走りの喜びに変えたこの一台は、単なる限定車ではない。国内わずか100台という、モリゾウからの挑戦状とも言える究極の特別仕様車。その驚きのスペックと概要をお教えしよう。
●文:月刊自家用車編集部(横田晃) ●写真:澤田和久
ニュルの路面で、モリゾウ自らつくり上げた、特別なGRヤリス
トヨタ自動車の会長であり、マスタードライバーの顔を持つ「モリゾウ」こと豊田章男会長が、自らニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦した経験を余すことなく注ぎ込んだ究極の1台、それが「GRヤリス MORIZO RR」だ。
このモデルは単なる記念碑的な特別仕様車ではなく、世界で最も過酷と言われるニュルの路面で、8速ATの「GR-DAT」を駆使して戦い抜いた実戦データと、モリゾウ自身の感性が高度に融合した、走りの本質を追求するアスリートのようなマシンに仕立てられている。
カーボン製専用リヤウィングを装着することで強力なダウンフォースを発生。サスまわりもしっかりと路面追従できる減衰力特性が与えられる。
カーボン製エンジンフードも装着。
ラジエーターグリルには、見た目に引き締まった印象を与えるピアノブラックがあしらわれる。
最大の特徴は、レースの現場からそのままフィードバックされた空力性能と足回りのセッティングにある。目を引くカーボン製のリヤウィングは、ニュル参戦マシンと同等の強力なダウンフォースを発生させ、浮き沈みの激しい荒れた路面でもタイヤを路面に力強く押し付ける。
この空力性能を前提に最適化された専用サスペンションは、スポーツ走行時の限界性能を高める一方で、日常のドライブでも不快さを感じさせないしなやかさを両立しており、開発陣の並々ならぬ執念が伺える。
タイヤサイズは225/40R18。ブロンズのアルミホイールと組み合わされる。ブレーキキャリパーにはモリゾウのシグネチャーカラーであるイエローが配される。
また、4輪駆動の制御システムには、ベース車の「GRAVEL」モードに代わって、新たに「MORIZO」モードが搭載された。これはモリゾウがニュルを最も安心して、かつ速く駆け抜けるために導き出したセッティングであり、前後トルク配分を50:50に固定する設定が組み込まれている。
ドライバーが意図した通りにクルマが動く、この「対話」を重視した姿勢は、小径化されたスエード表皮のステアリングや、独立したスイッチ形状にまで及んでおり、操作性の細部に至るまでモータースポーツの知見が反映されている。
コクピットはドライバーの操作感を高める工夫が目白押し。トランスミッションは8速DATが組み合わされる。イエローステッチが配されるセミバケットシートも専用タイプが奢られる。
スエード表皮を使ったステアリングホイールには、GRヤリスRally2からの学びを得て、各種スイッチが独立した形状で配置される。
100人の選ばれしオーナーは、スマホアプリ「GR app」の抽選で選ばれる
スタイリングに目を向ければ、専用色「グラベルカーキ」にマットブロンズのホイール、ピアノブラックのグリルが組み合わさり、戦う道具としてのストイックさと都会的な洗練さを併せ持つ。さらに、ブレーキキャリパーやインテリアのステッチには、モリゾウのシグネチャーカラーであるイエローが配され、このクルマが特別な出自であることを静かに主張している。
2026年春に日本国内でわずか100台のみが限定発売されるこのモデルは、スマホアプリを介した抽選という極めて狭き門となるという。しかし、それは豊田章男という一人のドライバーが、ニュルという戦場で手に入れた「ずっと運転していたくなる笑顔の感覚」を共有するための、情熱の結晶に他ならない。所有すること自体が、トヨタの「もっといいクルマづくり」の最前線に触れることを意味する特別な存在といえる1台だ。
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