
「ハコスカ」こと3代目スカイラインや、「サンマル」こと初代「フェアレディZ」のように、人気の旧車には、その歴史の中で愛称が定着しているクルマも少なくありません。基本的には憧れや親しみを込めて良い印象の名称が多いように感じますが、中には「え、なんでそんな呼ばれ方なの?」というような不名誉な印象を受ける呼び名もあったりします。2代目の「日産・ローレル」はそのひとつで、「ブタケツ」や「カンオケ」という、あんまり歓迎したくない印象の名称でよばれています。ここではそんな2代目の「日産・ローレル」にスポットを当てて、すこし掘り下げてみようと思います。
●文:往機人(月刊自家用車編集部)
2代目ローレルは、4代目スカイライン(ケンメリ)とシャシーを共有する兄弟車
2代目のローレルは1972年の4月に発売されました。この頃のローレルの日産内の立ち位置は“高級GT”といった感じで、スカイラインとセドリック&グロリアの間を埋めるポジションの車種として開発されました。ボディタイプは2ドアハードトップと4ドアセダンの2系統のみとなっています。
キャッチコピーは「ゆっくり走ろう」。車体は大きくなり、旧プリンスの開発陣が手がけるスカイラインと基本設計を共有化。日産製直列6気筒のL20型エンジンも搭載された。マイナーチェンジで2.6L(後に2.8L)エンジンを積むローレル初の3ナンバー車も誕生した。
型式は「C130系」で、初代の「C30系」から100の位が1つ増えた形となります。この時期の日産のルールでは、アルファベットの部分がシャシーの種類と車種を表していて、「C」は同時期のスカイライン(C110系)と共通です。その型式が表していますが、シャシーは「C110系」の4代目スカイラインと(基本的に)共用しています。
フロアを下から見て、ハードトップのローレルとスカイラインを見分けられる人はそういないでしょう。エンジン、駆動系、足まわりなどの部品はほぼ共用しているようです。ただし、ホイールベースの数値を見ると、ローレルが2670mmなのに対してスカイラインは2610mmとローレルが60mm長くなっています。(トレッドは共通)
これはおそらく、車格を上げる目的で室内の広さを向上させるために調整が入ったのだと思われます。そしてセダンの方は、リヤのサスペンション型式がスカイラインと異なるのが特徴です。スカイラインのセダンはハードトップと共通の“セミトレーリング式”という、左右独立したスイングアームを持つ方式でした。
【4代目スカイライン(C110型)】
画像は、C110型スカイライン(ケンメリ)。2代目ローレルは、4代目スカイライン(C110型)と同じ工場で生産されることになったため、シャシー等基本設計を共有することになる。
その頃の高級車はリヤが独立懸架ではなく、リジットマウントという、左右の車輪が1本のパイプ(とデフケース)で繋がった、いわゆる“ホーシング”という方式が主流で、上位車種のセドリック&グロリアもその方式でした。ローレルは高級路線を打ち出していくため、後席に快適性が求められるセダンにはそのリジットマウント方式が採用されています。
スカイラインと同じL20型直6エンジンを、排気量アップして搭載
搭載されるエンジンは、先代から引き続き採用された直列4気筒1990ccの「G20型」と直列4気筒1815ccの「G18型」に、スカイラインと共通の直列6気筒1998ccの「L20型」が加わります。そしてその後のモデルチェンジで直列6気筒のラインナップに2565ccの「L26型」と2753ccの「L28型」が加わり、上位グレードは高級路線らしい3ナンバーモデルとなります。また、1973年には排気ガス規制の強化に対応するため、直列4気筒モデルが1770ccの「L18型」に切り替わりました。
従来の4気筒G型エンジンに加え、2代目からスカイラインと同じ1998cc直列6気筒ツインキャブエンジン(L20型)も搭載。最高出力125ps、最高速度175km/hを謳った。その後のマイナーチェンジで、排気量は2.8Lまでアップされた。
走りの良さを残しながら高級感を高めるため、内装の雰囲気を重厚感を感じるつくりと質感に仕立て、スカイラインとの差別化が図られています。特にシートはクッションが厚めでソフトにつくられていて、高級なソファを思わせる座り心地になっています。
装備に関しても、ルームミラーの基部にルームランプと各種アラートのインジケーター表示部を備えた“オーバーヘッドコンソール”を備えたり、リモコン式のフェンダーミラーやパワーステアリングを装備したりと、上位車種同様の先進装備が備えられました。
「ブタケツ」をはじめ、さまざまなニックネームが付けられていた
2代目ローレルといえば、旧車好きの界隈では「ブタケツ」という呼び方をされることが多くあります。スタイリッシュで重厚感のある外観のデザインからすると、「え、バカにしてるの?」と思ってしまうような呼び方に感じて面食らってしまうかもしれません。
なぜこのような呼び方が定着したかという点が気になります。その由来については諸説あるようですが、有力なものでは、そのハードトップの特徴的なボリュームを持たせたリヤフェンダーと、厚みを持たせたトランク後面、そしてテールランプユニットが埋め込まれた厚みのあるリヤバンパーで構成された後ろ姿が、「ブタのようにでかいケツ」のようだとして呼ばれ始めたとのこと。
ケンメリスカイラインを彷彿させる2ドアハードトップは、リアにビルトインされたコンビランプで「ブタケツ」の愛称で人気だった。スカイラインと同じく50年規制に適合するために1975年にL20E(EGI)搭載車を追加。
他にも、おそらく別の地方発祥だと思われますが、「ブタケツ」同様の理由から、「カンオケ」という呼び方が定着していたところもあるようで、筆者の体感では「ブタケツ」が8割、「カンオケ」が2割くらいの割合いといった感じです。また、それとは別にセダンには「ガメラ」という愛称があります。
ハードトップの特徴的なボリュームを持たせたリヤフェンダーと、厚みを持たせたトランク後面、その下に配置されたテールランプユニットが埋め込まれた厚みのあるリヤバンパーで構成された後ろ姿が、「ブタのようにでかいケツ」のようだとして呼ばれ始めたとも言われている。
なぜか暴走族の間で、人気が高かったクルマ
セダンもボディサイドの面はハードトップと同じく「Z字」形に切り返しがある意匠を採用していますが、後部ドアがある分、ハードトップほどリヤにボリュームはありません。その代わり、というわけではありませんが、フロントのヘッドライト周囲の意匠が特徴的になっています。
ヘッドライトが収まる四角いシルバーのベゼルが中央に向けて少し広がっている形状で、その印象が目頭の伸びた怪獣ガメラのようだとして、その名称が定着したようです。ちなみにこの意匠は1973年以降の後期モデルからで、それ以前の前期モデルには愛称はありません。
マイナーチェンジにより、ヘッドランプの四角いシルバーのベゼルが中央に向けて少し広がっている形状が目頭の伸びた怪獣ガメラを連想させることから「ガメラローレル」とも呼ばれたセダン。
また、この2代目ローレルは暴走族全盛期に人気の高かった車種のひとつでした。暴走族の世界は完全な縦の階級が徹底されていたため、幹部など階級が上の構成員ほど高級な車種を選べる、選ぶ傾向がありました。そのため、その世界を知っている旧車好きから「あの当時はローレルに乗れる階級に憧れていたもんだよ」なんていう話が聞けたりしました。
呼ばれ方はちょっと蔑称のようですが、実際はオーナーが「オレのブタケツ乗ってみるか?」と、ちょっとおどけて呼んでいたのが想像できます。
「教養としてのニッポン自動車産業史」 横田 晃(著)内外出版社刊
教養としてのニッポン自動車産業史
内外出版社刊
総ページ:288ページ 1,760円(税込)
自動車社会は100年に1度の大変革期にあると言われています。報道では、日本の自動車産業が変革に乗り遅れたと、危機を煽る論調の報道も少なくありません。しかし、戦後わずか80年で世界一の自動車大国に上り詰めた日本の本領発揮は、まだまだこれから、というのが本書の趣旨です。
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本書では、自動車雑誌の編集に40年以上関わってきた著者が、自動車ゼロの戦前~販売台数過去最高を記録した1990年代までの歩みを解説。主には自動車産業に起った出来事、自動車メーカーの成長と育まれていく個性、活躍した人物、時代を象徴する名車について紹介します。
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