
日産自動車は4月14日、「モビリティの知能化で、毎日を新たな体験に」という新たな長期ビジョンを発表した。AIを中心に据えた「AIディファインドビークル(AIDV)」を事業の核とし、移動そのものを豊かに変革していく構えだ。同時に、市場ごとに最適な電動化技術を提示し、多様化する顧客ニーズに即応する。5月の通期決算発表では「Re:Nissan」の進捗を報告し、年後半には本戦略の更なる詳細を明らかにする予定だ。
●文:月刊自家用車編集部
AIを核とした次世代技術の展開
今回の発表で最も注目すべきは、AIを車両開発の中核に据えた「AIディファインドビークル(AIDV)」への転換だ。最高経営責任者(CEO)のイヴァン・エスピノーサは、経営再建計画「Re:Nissan」で築いた基盤の上に立って次なる成長への道筋を示し、知能化技術の徹底により、安全かつ直感的で信頼されるモビリティを提供し、顧客の日常を価値ある体験へと進化させることを明らかにした。
これまでのクルマは、ハードウェアを制御するためにソフトウェアが存在していた。しかし、日産が見据える未来では、AIが主役となり、走る、曲がる、止まるといった基本性能から、乗る人の感性に寄り添う体験までをシームレスに紡ぎ出す。日産は長年培った高度な車両制御と安全技術を土台に、将来的にはラインアップの約9割にAIドライブ技術を搭載することを目指すとしている。
具体的な展開として、2026年夏に発売予定の「エルグランド」を皮切りに、2027年度末までには自動運転技術を高度化させた次世代プロパイロットを導入。これにより、クルマは単なる移動手段を超え、暮らしに溶け込むパートナーへと進化を遂げることになる。
また、電動化戦略においては、独自の「e-POWER」を中核に据えつつ、市場の特性に応じた柔軟な選択肢を用意。走破性を求める層に向けたフレーム車用ハイブリッドや、外部連携によるPHEV、レンジエクステンダー(REEV)など、パワートレーンの拡充を行うことでユーザーニーズに応える。
日産本社グローバルギャラリーで開催された長期ビジョン発表会では、新型エクストレイル/ローグe-POWERと新型ジュークEVの実車が披露された。新モデルを含めた今後の展開については、5月に予定している通期決算発表において「Re:Nissan」の進捗について説明するとともに、今年後半に戦略の方向性について詳細を発表する予定とのこと。
商品ラインナップの最適化とブランド再編
事業基盤の強化に向け、商品戦略も大幅に刷新する。モデル数を従来の56から45へと絞り込み、低収益モデルからは撤退。成長が見込まれる分野への投資を集中させる。各モデルの役割は以下の4カテゴリーに明確化された。
ハートビートモデル
ブランドの魂を象徴し、感情を揺さぶる革新的モデル(スカイライン、エクステラなど)
コアモデル
事業の安定と規模を支えるグローバル主力車種(エクストレイル、ジュークEVなど)
成長モデル
新たな需要を掘り起こす牽引役
パートナーモデル
協業を通じて市場を補完するモデル
本日、その具現化として「エクストレイル/ローグ e-POWER」や、欧州市場を担う「ジュークEV」を公開した。さらに、米国での冒険心を象徴する「エクステラ」や、日本市場の象徴である「スカイライン」のティザー映像も披露し、日産が描く未来の輪郭を示した。
新型エクストレイル/ローグ e‑POWER
日産独自の電動モーター駆動システムを採用したグローバルのコアモデル。充電の必要がなく、ハイブリッドならではの高効率と電動駆動ならではの軽快な走りを実現する。
新型エクストレイル/ローグ e‑POWER
新型エクストレイル/ローグ e‑POWER
新型エクストレイル/ローグ e‑POWER
ジュークEV
大胆で個性的なデザインと先進的な機能を融合したジュークEVは、欧州におけるコアモデル。
ジュークEV
ジュークEV
エクステラ
米国におけるハートビートモデルであるエクステラは、冒険心をかき立てるキャラクターとフレーム構造ならではの強靭性を備え、目的に基づいたデザインを採用。
エクステラ
スカイライン
日本市場のハートビートモデルであるスカイラインは、ドライバー中心で、高性能で意のままの走りを実現する。
スカイライン
市場ごとのグローバル戦略:日本・米国・中国を牽引役に
世界市場においては、日本、米国、中国をリード市場と定義し、戦略を再構築。これらのリード市場は、業績を支える基盤であると同時に、競争力や事業基盤をグローバルに牽引する役割を担うことになる。
日本
ホームマーケットの日本は、次世代プロパイロットの導入やモビリティサービスの展開など、先進技術の実証をリードする役割となる。同時に主力モデルのラインアップ強化も進め、2028年度以降には、コンパクトカーシリーズを新投入。2030年度までに55万台の販売を目指す。
米国
安定的な収益を確保し、持続的な成長を支える基盤であり、2030年度までに年間100万台の販売を目指す。次世代「ローグe-POWER」やV6エンジンとV6ハイブリッドを搭載する「エクステラ」を始めとするフレーム車で商品力を強化し、DセグメントSUVではニーズが高いV6エンジン仕様を維持。一方EVへの投資は、ユーザーの動向と政策変化を的確に見極めつつ、柔軟に対応していく。インフィニティは今後も新型モデルを投入し、ブランドと収益性を高めていく。
中国
開発のスピードと高いコスト競争力を生かし、グローバルな輸出を担う拠点となる。まず、NEVラインナップを強化し、2030年度までに年間100万台の販売を目指す。「N7」はラテンアメリカとアセアンへ、「フロンティア プロ」はラテンアメリカ、アセアン、中東へとより広範に輸出していく。
これからの日産に期待が高まる!
もちろん、これらの壮大なビジョンの実現には、インフラ整備や法規制など、超えなければならない壁は少なくない。しかし、日産にはかつて「技術の日産」として世界を驚かせてきた自負と実績がある。
今回の発表でとくに注目したいのはクルマの「知能化」が単なる便利さの追求に終わらないことだ。AIがドライバーの意図を汲み取り、安全を担保しながらも、運転する楽しさを最大化してくれる。あるいは、車内がプライベートなリビングやオフィスへと姿を変え、移動時間が人生を豊かにするひとときへと変わる。日産が描く「毎日を新たな体験に」という言葉には、そんな未来への確かな手応えが込められているように感じる。
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