
1981年、ホンダのコンパクトカー「シティ」のトランクに積めるバイクとして誕生した「モトコンポ」。車体を四角い箱型に折りたためるという前代未聞のギミックを備え、「4輪+2輪=6輪生活」という斬新なライフスタイルを提案した。発売当時は時代を先取りしすぎたコンセプトだったが、後にメディアで取り上げられたことで人気が爆発。生産終了から40年以上が経過した現在も、その愛くるしいデザインとメカニカルな魅力で熱狂的なファンを魅了し続けている。
●文:月刊自家用車編集部
ホンダが提案した自動車(四輪)とバイク(二輪)を組み合わせた「六輪生活」というライフスタイルを具現化したシティ+モトコンポ。
「六輪生活」という、これまでの常識の枠に捉われない全く新しいライフスタイルを提案したホンダ
ホンダが1981年に発売した極めてユニークな50ccの折りたたみ式原付スクーター「モトコンポ」。このバイクは、同時期に登場したコンパクトカー「初代シティ」のトランクに積載することを前提に開発された「トランクバイク」である。自動車の四輪とバイクの二輪を組み合わせた「六輪生活」という、これまでの常識の枠に捉われない全く新しいライフスタイルを提案した画期的なものであった。
超小型サイズを実現するために、足回りも極限までコンパクトに設計。前後ともに8インチ(2.50-8)という非常に小さなタイヤを装着、フロントはテレスコピック式、リアはスイングアーム式と一応バイクの基本構造を採用しているが、ストローク量が非常に短く、路面の段差やギャップの衝撃はダイレクトに伝わ理、かなりピーキーな乗り心地であった。
トップカバーを開けると、左右のハンドルが車体内部にストンと落ち込むように収納される。シートもロックを外すことで、同じく車体内部に押し込むことができ、完全にフラットな状態となる。また、足を乗せるステップも、車体側面にピッタリと折りたたむ構造となっていた。
主要諸元 MOTOCOMPO(1981年式)
●全長×全幅×全高:1185mm×535mm×910mm ●車両重量:45kg●乗車定員:1名●エンジン(AB12E型):空冷2サイクル49cc ●始動方式:キック●点火方式:CDI●最高出力:2.5PS/5000rpm●最小回転半径:1.3m●燃費:70.0km/L(30km/h定地走行テスト値)●燃料タンク容量:2.2ℓ●変速機:自動遠心クラッチ●タイヤ(前/後):2.50-B-4PR/2.50-8-4PR◎新車当時価格(東京地区):8万円
発売から2年で15万台を売る大ヒットモデルとなった初代シティ
同時開発されたシティは、この斬新なコンセプトバイクを搭載するため、車体はまるで長方形の箱のような、直線的かつコンパクトなデザインを採用した。タイヤを四隅に追いやり、全高を思い切って高めた、寸詰まりなプロポーションの2BOX。背を高め、乗員をアップライトに座らせることで空間効率を高める手法は、今日のハイト系軽自動車では常識だが、当時は誰もが驚くコロンブスの卵的な「発明」と言えた。
初代シティは、タイヤを四隅に追いやり、全高を思い切って高めた、寸詰まりなプロポーションの2BOXだった。
収納性に優れた箱型に変形する独創的なメカニズム
モトコンポは、走行時には通常のスクーターとして使用でき、車載や収納時にはハンドル、シート、そしてステップなどを車体内部に完全に格納し、フルフラットな箱型に変形させることができた。エンジンは最高出力2.5馬力を発揮する49cc空冷2ストローク単気筒で、街乗り用途としては十分な性能を備えていた。また、横倒しになっても燃料やオイルが車内に漏れ出さないよう、専用の漏れ防止機構を備えていた点も、トランクバイクならではの緻密な工夫が施されていた。
画期的なアイデアとは裏腹に実用性という面で商業的な苦戦となった
しかし、この画期的なバイクも商業的な点では苦戦を強いられた。乾燥重量は約42kgあり、原付バイクとしては軽量な部類に入るものの、車のトランクへ持ち上げて出し入れするには決して軽くない重量だったのだ。加えて、出先でわざわざ車からバイクを降ろして走るというシチュエーション自体が当時の人々の生活様式に定着せず、販売台数は目標を下回っていた。その結果として、発売からわずか2年後の1983年には生産終了となってしまった。
現在では、ポップカルチャーによる再認識でカルト的な人気を誇っている
ところが、生産終了から長い年月が経過した現在、モトコンポの真の評価は劇的に高まってきたのだ。愛嬌のある唯一無二のデザインや、変形ガジェットのようなメカニカルなギミックが再評価され、熱狂的なマニアやコレクターから絶大な支持を集めるようになった。特に、人気漫画『逮捕しちゃうぞ』の中で主人公たちのパトカーに積載され、縦横無尽に活躍したことで知名度が爆発的に向上した。こういった影響もあり、現在でも中高い人気を誇っている。
「機構最小、機能最大」というそのコンセプトは、今日のホンダ車も掲げるMM思想=マン・マキシマム、メカ・ミニマムそのもの。さらに、そうして稼いだ荷室にぴったりと収まるモトコンポ。2輪、4輪をともに手がけるメーカーならではの商品企画だった。
時代を先取りし過ぎた遊び心は、今もホンダに受け継がれている
近年では、このモトコンポのコンセプトと精神を現代に受け継いだ折りたたみ式電動スクーター「モトコンパクト」が北米などで発表されるなど、ホンダの独創性や遊び心を象徴するアイコンとして今もなお受け継がれているのだ。斬新だったコンセプトは、時代を先取りしすぎたゆえに当時は短命に終わったが、単なる移動手段を超えた魅力に溢れるモトコンポは、日本の二輪車史に燦然と輝く伝説の名車と言えるだろう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(旧車FAN)
セレステ(青い空)に込められた、低公害時代に真っ向から立ち向かう決意 1970年代半ば、自動車業界にとってまさに「冬の時代」が訪れていた。オイルショックによる燃料価格の高騰で省燃費志向が急速に高まる一[…]
特別なエンジンが搭載された「コロナ…」ではなく、まったく異次元のスペシャルクーペ「1600GT」として誕生 「トヨタ・1600GT」は、1967年に発売されたトヨタのスポーツクーペです。 もしこの段階[…]
57年前とは思えない美しいデザイン。セダンとは異なる設計を採用した高級クーペ 1967年5月、マツダは世界初の量産2ローターロータリーエンジン車「コスモスポーツ」を発売し、自動車業界にその技術力を知ら[…]
SSM(1995年東京モーターショー出品車両) ホンダファンに差し出された究極の挑戦状 数えきれないほどの自動車エンジニアを取材してきて思うのは、幸せそうな仕事だなあということだ。多くはクルマが大好き[…]
日米欧の名車約120台による公道パレードを実施 目玉企画のひとつが、1996年以前に生産された日米欧の個人オーナー車約120台による「クラシックカーパレード」だ。 朝8時30分にトヨタ博物館(長久手市[…]
最新の関連記事(ホンダ)
艶やかなブラッククロームが魅せる「Black Sports Style」 今回のマイナーモデルチェンジに合わせて仕立てられた「Black Sports Style」は、SUVならではの力強い佇まいに、[…]
エントリーグレードの「快適装備・後席おもてなし力」が大幅向上! エントリーモデルだからといって妥協させないのが、今回のヴェゼル改良における大きな見どころだ。 エントリーグレードの「G」およびハイブリッ[…]
SSM(1995年東京モーターショー出品車両) ホンダファンに差し出された究極の挑戦状 数えきれないほどの自動車エンジニアを取材してきて思うのは、幸せそうな仕事だなあということだ。多くはクルマが大好き[…]
値引き情報の見方 ◎車両本体目標 車両本体価格からここまで取れれば成功という額。付属品からの値引きは含まない。 ◎リセール予想 次に買い替える時の下取り査定額。2~3年後の評価をA~Eの5段階で評価。[…]
値引き情報の見方 ◎車両本体目標 車両本体価格からの値引き目標額。実際の商談では、付属品からの値引きや無料サービスなども含めて総額で判断したい。 ◎リセール予想 A:すこぶる割高な下取りが期待できるB[…]
人気記事ランキング(全体)
雨の日に意外と困る「ドアミラーの水滴」 雨天時の運転では、フロントガラスならワイパーで視界を確保できる。サイドウインドウも、走行中であれば風によってある程度水滴が流れ、どうしても見えにくければ窓を一度[…]
使っていないUSB端子が、愛車をドレスアップする場所に変わる!? 愛車のインテリアにちょっとした変化を加えたい。そう思っても、内装パーツの交換や本格的なイルミネーションの設置となれば、費用も手間もかか[…]
oplus_0 創業150年の「岡本屋旅館」のミルキーブルーの露天風呂と絶品グルメが魅力 「RVパーク Charlie’s Lanai」は、別府八湯の明礬温泉に位置し、名物「地獄蒸しプリン」で知られる[…]
見落としていた便利なスペース! ヘッドレストが収納場所に変身 スマートフォンのホルダーや充電器、ドリンクホルダーなど、車内を便利にしてくれるカーグッズは数え切れないほど存在する。こうした製品を上手に取[…]
RVパーク 大江戸温泉物語Premium 下呂本館 車中泊を安心して、かつ快適に楽しみたい方におすすめのRVパーク 日本RV協会が推進する「RVパーク」は、キャンピングカーやマイカーで旅行を楽しむユー[…]
最新の投稿記事(全体)
「走りのマツダ」を捨てた選択が吉だった 新車の納期の長期化が常態化して久しい国内SUV市場。その中で2026年5月に登場した3代目となる現行CX-5は、堅調な足取りで確かなセールスを築き上げている。 […]
三菱「新型パジェロ」タイ仕様のスペックは? 新型パジェロは、悪路走破性や耐久性を重視した本格クロスカントリーSUVだ。トライトンをベースとするラダーフレーム構造を採用しながら、SUVとしての乗り心地や[…]
今回のテスト車両(日産サクラ) カーナビやディスプレイオーディオの拡張性を飛躍的に高めてくれる注目のカー用品 データシステム「USB KIT(CEA940)」は、カーナビやディスプレイオーディオの拡張[…]
セレステ(青い空)に込められた、低公害時代に真っ向から立ち向かう決意 1970年代半ば、自動車業界にとってまさに「冬の時代」が訪れていた。オイルショックによる燃料価格の高騰で省燃費志向が急速に高まる一[…]
国産車をメインとした新車バイヤーズガイド「月刊自家用車」が電子版として装いも新たにスタートしました。全ページ無料でご覧いただけますのでこの機会にぜひご一読を! 今月はランドクルーザーシリーズの魅力解説[…]
- 1
- 2






























