
「これってクルマ……?」そんな疑問が浮かぶような、ちょっと不思議な乗り物。東京都江戸川区の町工場、株式会社西川精機製作所が開発を進めているのが、4輪の超小型モビリティ「Blue Jay(ブルージェー)」だ。
丸みを帯びたボディに小さな4輪を備えた姿は、どこかおもちゃのよう。ポップで愛嬌のあるデザインが目を引く。ところが、その中身はかなり本気なのである。
●文:月刊自家用車編集部 ●写真:株式会社西川精機製作所
16歳以上なら免許不要! 4輪+外装ボディで公道を走れる
Blue Jayは、道路交通法上の「特定小型原動機付自転車」の規格に対応しており、16歳以上なら運転免許が不要で、公道を走行できる。もちろん、一般的なクルマと同じように自由に走れるわけではなく、特定小型原動機付自転車に定められた交通ルールや保安基準などに従う必要がある。
Blue Jayの大きな特徴は、丸ハンドルを採用した4輪構造と、車体を覆う外装ボディだ。全幅は約60cmと非常にコンパクト。雨や風の日でも使いやすく、日常の移動をより快適にすることを目指している。
自転車ではちょっと大変。でも、近所への買い物や通院のために軽自動車を使うほどでもない――そんな「自転車以上・軽未満」の移動手段として気になる存在だ。
4輪小型モビリティ「Blue Jay」
「横風で倒れない?」日本大学と風洞実験
全幅はわずか約60cm。しかも外装ボディで車体を覆ったBlue Jayを見ていると、「横から強い風を受けたら大丈夫なの?」という疑問も浮かぶ。実際、超小型モビリティは車体がコンパクトであることが大きなメリットになる一方、軽量な車体では風の影響も気になるところだ。
全幅はわずか約60cmという薄さ。
西川精機製作所は、日本大学理工学部航空宇宙工学科の協力を得て、Blue Jayの風洞実験を実施した。
実験では、車体にさまざまな角度から風を当てていき、最終的には真横から風速15.1m/sの風を受ける条件でも安定性を確認。風速15.1m/sともなれば、人が風に向かって歩くのが難しくなるほどの強風だ。そんな強い横風を受けたにもかかわらず、実験ではBlue Jayのタイヤが浮き上がることはなかったという。
強い横風を受けも大丈夫。
Blue Jayは単に「小さくて軽い乗り物」を目指しているわけではない。開発では、日大理工学部をはじめ、東京都立産業技術研究センターなどとも連携。車体の軽量化や走行性能など、実用化に向けた技術検証が進められている。
実際の試作車に乗った印象については、ハンドルを切るとゆっくりと曲がり、アクセルを踏むと穏やかに動き出すという。開発関係者は、その乗り味を「遊園地の乗り物」のようだと表現している。
EVから将来は「水素」へ!?
現在はEVモデルの市場投入を目指しているBlue Jayだが、西川精機製作所はその先も見据えているようだ。
将来的には、低圧水素タンクを使った水素燃料電池(FCV)モデルの開発を構想しているそうで、カセットガスのように燃料を交換・補充するイメージの水素モビリティを目指しているという。
さらに全国の自動車整備工場や町工場などをフランチャイズ化し、地域で組み立て、整備、販売まで行う「地産地消型」のモビリティ事業も計画しているとのこと。
高齢者の移動から観光、配送まで
Blue Jayの開発背景にあるのが、高齢者の移動手段の確保だ。
2025年の運転免許自主返納者数は約43.5万件に上る一方、地方では公共交通機関の縮小が進んでいる現状がある。免許を返納した後も、買い物や通院のための移動手段は欠かせない。そこで、4輪による安定性と外装ボディによる快適性を備えた新たな移動手段を提供しようとしているのが西川精機製作所が開発する「Blue Jay」なのだ。
しかし、用途はシニア向けだけに限定する必要はない。観光地での周遊モビリティや、狭い路地などでのラストワンマイル配送への活用も想定。コンパクトな車体を生かし、さまざまな場面での近距離移動を支えるモビリティを目指している。
「Blue Jay」が街中を駆け回る未来がやってくるかもしれない
「かわいい見た目」に隠された町工場の本気
Blue Jayを開発する西川精機製作所は、東京・江戸川区で60年以上にわたって精密金属加工を手掛けてきた町工場だ。スーパーコンピューター関連機器やスポーツ競技用機材などを製造してきた技術を生かし、現在は自社製品となるモビリティ開発に力を入れている。
同社によれば、試作段階からテレビなどでも紹介され、全国から100件を超える購入・導入に関する問い合わせが寄せられているという。ちなみに「Blue Jay」は英語で、スズメ目カラス科に分類される「アオカケス」を意味する。車名がアオカケスに由来するかは明らかではないが、名前までどこかかわいらしい。
西川精機製作所に問い合わせたところ、販売時期については「2026年11月中旬を予定」販売価格については「現在精査中」と回答をいただいた。9月中には仕様の発表と合わせて公表予定だそうだ。
そんなBlue Jayの量産化に向け、西川精機製作所は2026年8月7日から株式投資型クラウドファンディングを開始した。量産体制の構築に加え、全国の町工場や自動車整備工場と連携した地域密着型の展開を目指している。
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