【大人の社会見学】日本の物流を支える整備された道路。いつも使ってるけど、意外と知らない『舗装道路』ができるまで。│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

【大人の社会見学】日本の物流を支える整備された道路。いつも使ってるけど、意外と知らない『舗装道路』ができるまで。

【大人の社会見学】日本の物流を支える整備された道路。いつも使ってるけど、意外と知らない『舗装道路』ができるまで。

舗装道路は現代社会を支える重要なインフラだ。スマホのタップ一つでほしいものが届くスムーズな物流も、天候に左右されずに移動や買い物ができる快適で清潔な日常生活も、日本が世界に誇る高性能なクルマの開発も、行き届いた舗装があってこそ実現されている。その現場は高度で緻密な技術の集大成。いつも何気なく走っている舗装道路ができるまでを見てみよう。
(※この記事は、2018年11月号オートメカニックにて掲載されたものです。)

●文:横田晃(オートメカニック編集部) ●写真/取材協力:株式会社NIPPO

交通量や重要度などに応じてカスタムメイドされる舗装

現在の日本の市町村道以上の舗装率は約80%。逆に20%も未舗装路があるのかと思うほど、津々浦々まで舗装は完備されている。戦後間もない昭和20年代にはわずか4.4%にすぎなかったことを思えば、素晴らしい成果だ。

そうした舗装は国や都道府県、市町村などの道路管理者が、交通量や都市計画、目的などを勘案して工法や種類を決め、施工会社に発注する。ひと口に舗装といっても、高速道路や幹線国道などの重交通路と住宅街の路地のような軽交通路では、下地となる路床の強度や路盤の厚みや突き固めの程度、さらに表面の舗装材の厚みや骨材の配合などが細かく違う。基本的な仕様は日本道路協会が指針や便覧などで定めており、管理者はそのメニューから選択するが、時には施工会社から、その場に応じた新工法などを提案することもある。

ここで紹介している舗装の手順は、そうした中でも最も手の込んだ、いわばフルコース。路地などの細い街路では路床の上に薄く路盤材を敷き、その上にアスファルト合材を敷く簡易舗装も多く採用されるし、現地の天候や気温などによっても、路床や路盤の厚み、下地処理の内容などが違う。一見、どこでも同じに見える舗装は、じつはカスタムメイドで作り分けられて、快適な暮らしを支えているのだ。

ここでは、舗装道路ができるまでの工程を一挙に紹介しよう。

【STEP1】測量・設計

コンピュータやITを駆使して引かれる図面

道路を新設するにしても舗装するにしても、施工には図面が必須。その図面を引くための基礎データとなるのが測量だ。今も昔も基本は3つの基準点の方向と距離を精密に計測して位置関係を割り出す三角測量だが、最新の測量にはドローンやGPSなども使われて、より正確を期している。もちろん、設計にはコンピュータも駆使。地質調査などの結果に基づいて、最適な構造や施工方法などを選択する分析にも、コンピュータは活躍する

基準点の上に立てた棒の方向や距離を、3点で計測して位置関係を割り出す三角測量は、昔から使われている信頼性の高い方法。

昔から航空写真を使った測量はあったが、GPSを搭載したドローンを使えばより安全、簡単かつ正確な俯瞰映像の撮影も自由自在だ。

CAD(コンピュータ支援設計)は、今では建築や舗装の現場でも欠かせないツール。施工図や構造図、計算書などの関連図面を同時進行で描ける。

【STEP2】路床工

凸凹の地面のままでは質の高い舗装は不可能なのだ

路床とは、俗にいう地べた。人間でいえば素肌にあたるそこが凸凹や傾いた状態のままでは、上にいくら厚化粧をしてもよい仕上がりは得られない。なおかつ、最終的に路面にかかる荷重を受け止める役割を担う路床が、一定の強さを持っていなければならない。そこで地形や地盤によっては土を入れ換えたり突き固めたり、セメントや石灰を添加してより強固に改良した上で、グレーダと呼ばれる大型機械で表面を平滑にならす。まさに基礎工事だ。

緩い地盤の場所や新たに建設する盛り土の築堤などには、より良質な土を他所から持ってきて、路床を構築することもある。

グレーダで表面をならすそばから、後続のタイヤローラで踏み固めている様子。見えない部分にも手を抜かないのが日本の現場らしさ。

【STEP3】路盤工

交通量などに応じた厚みや構造で荷重を分散

土の路床の上に造られる路盤は、大きめの砕石や砂で構成された層。路面の舗装にかかる大型車などの局所的な荷重を、分散して路床に伝える。鉄道の線路の枕木の下に敷かれている砂利(バラスト)と同様の役割だ。その厚みは、交通量などによって変わる。高速道路などの重交通路では、路盤の厚みは80cmほどになる。一方、路地などの軽交通路では、路盤の厚みは15cmほどの舗装となる。

鉄輪のマカダムローラの後、タイヤローラでさらに深くまで締め固める。この順番は、アスファルト合材を敷いたあとも同じ。

グレーダでならした路盤材を、鉄輪のマカダムローラで締め固める。どの作業も踏み残しのないように、細心の注意を払って進められる。

路盤の施工は縁石などが設置されたあとの作業。目的に合わせてブレンドした砕石などを路床の上に撒き、グレーダで敷きならしていく。

【STEP4】プライムコート

路盤とアスファルト合材を接着

表面のアスファルト合材だけでなく、その下の路盤の表面にも、アスファルトを使う。プライムコートと呼ばれるこの処理では、路盤面にアスファルト乳剤と呼ばれる水分の多い、ジャバジャバのアスファルト水溶液を撒く。アスファルト乳剤には、路盤面の砕石や砂をしっかりと固めたり、アスファルト合材と路盤を接着する役割がある。

舗装に使われるアスファルトは冷えると固まってしまうのに対して、アスファルト乳剤は強度はさほど高くないが常温で取り扱えることから、かつては簡易舗装などに多く使われていた。

【STEP5】舗装工

技術とチームワークがモノをいう本舗装作業

下地が完成したところで、いよいよアスファルトと砕石などの骨材を混合した、合材を敷く舗装作業が始まる。一般的なアスファルト合材は現場到着時点で150℃以上。それが冷えて固まる70℃程度になるまでに作業を完了しなくてはならない。ダンプカーからアスファルトフィニッシャと呼ばれる機械に合材を下ろして路面に均一に敷き均す工程、マカダムローラと呼ぶ鉄輪のロードローラで転圧する工程、さらに路面をこねる効果のあるタイヤローラで転圧した上で、さらにタンデムローラと呼ばれる鉄輪ローラで仕上げる工程まで、一気に、なおかつ正確にやり遂げる技術とチームワークが求められる現場だ。

アスファルトフィニッシャは、前方(写真奥)のホッパにダンプカーから合材を降ろし、後方のスクリードから均一に路面に敷き均す。速度やコース取り、後工程の作業と息を合わせるのもポイントだ。

写真で先頭に見えるのはタイヤローラ。続いてマカダムローラ、タンデムローラが見える。その後方にいるのがアスファルトフィニッシャ。

アスファルトフィニッシャの幅は1車線分。高速道路などの複数車線の道路では、1車線ずつ作業することもあるが、写真のように車線数分のフィニッシャを並べて一気に施工する場合もある。

【STEP6】区画線工・施設工

それぞれのエキスパートの手で道路の仕上げを行なっていく

舗装が美しく仕上がると、あとはそれぞれのエキスパートの手で区画線を引いたり、ガードレールや標識を立てるなどの工程を経て、道路は完成する。現在では、新設される道路の舗装より、古い舗装のメンテナンスの需要が増えている。その場合も、舗装作業の手順は基本的にここで説明した通り。古い舗装をはがしたあとは、新設の道路と同じように適切な工法や構造で新たな舗装が施されて、我々の快適な暮らしを支える。

路面にペイントや鋲などで標示を施工するのは、舗装を手掛けたのとは別の専門会社。ペイントの素材やライトの光を反射する素材などには、全国統一の規格がある

標識やガードレールなどを設置する施設工も、舗装会社とは別の専門会社の仕事。ちなみに高速道路で使われている長尺のガードレールにぶつかって壊すと、軽自動車が買えるぐらいの請求が来る。

【完成・開通】

アスファルト舗装の耐久性は、一般的に10年とされている。しかし、交通量の増加や気象条件など、様々な要因により、早々に路面にひび割れが出来たり、ポットホールと呼ばれる穴が開いたりといった問題が起きることもある。こういった場合、適切にメンテナンスをすることで鋪装の機能を維持することが必要だ。南北に長く、四季があり寒暖の差が大きい日本は、アスファルト舗装にとっては必ずしも理想的な環境ではないが、高い技術で作られた素材や施工によって、日本の舗装道路は世界でも最高レベルの品質で、快適なドライブを実現しているのだ

画像は完工直後の新東名高速道路の模様。高い技術で施工された路面は、乗り心地に優れるだけでなく、メンテナンスの頻度も少なくて済み、工事に伴う渋滞なども回避できる。

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