
BYDから日本市場専用に開発された軽EV「RACCO(ラッコ)」が発売された。都内で開催された発表会の様子と展示車に触れた感想などをレポートしよう。
●文:鈴木ケンイチ ●写真:自家用車編集部/BYD
実質200万切りでガソリン車も狙い撃ち
BYDの新型軽EVである「RACCO(ラッコ)」の発表会が2026年7月28日に都内で開催された。
ラッコは、BYDが日本専用に開発した新型モデルになるが、海外の自動車メーカーが日本の軽自動車規格を専用設計して投入するのは初になる。現在、最も売れ線になっている両側スライドドアのスーパーハイトワゴンのEVとして投入されたことも注目のポイントだ。
世界最大のEVメーカーであるBYDが、日本の軽自動車市場に参入するということもあって、発表会には自動車専門メディアだけでなく、多くのメディアが参加。BYDアンバサダーであり、ラッコのCMにも登場する女優・広瀬アリサさんがラッコに乗ってステージに登場するなど、大いにイベントは盛り上がっていた。
発表会にはラッコのCMにも出演する広瀬アリスさんも来場。ラッコの魅力について語ってくれた。
昨年のジャパンモビリティショーなどで、すでにエクステリアなどは公開されていたが、この場で注目を集めたのが、販売価格とグレード構成だ。
ラッコの価格は、エントリーの「200」グレードが214万5000円、ミドルグレードの「300Plus」が239万8000円、上位グレードの「300Premium」が249万7000円になる。国からのCEV補助金は15万円になるので、エントリーの「200」グレードは、実質的に200万円を切る設定となることが判明した。
車両価格をライバルとなる日本の軽EVと比べると、30~40万円ほど安価な設定になる。ただ、日本メーカーの大半の軽EVに出される補助金は、制度の上限いっぱいとなる58万円。つまり、BYDよりも優遇されている。この国の補助金の差もあって、実質的な購入価格で比べると、ラッコと国産軽EVはほぼ同等。つまりラッコは「値段の安さ」ではなく、装備や性能の充実度で勝負する必要があるわけだ。
さっそくスペックと装備を、少し詳しく紹介しよう。
グレード構成としては、バッテリー22.4kWhで航続距離210kmのエントリーグレード「200」と、35.8kWhで320km走れる「300Plus」「300Premium」の3グレード構成となっている。
ラッコは、海外メーカー初の日本専用設計となる軽自動車規格のスーパーハイトワゴンEV。エントリーグレードでは実質200万円を切る価格設定がされるなど、中身のコスパの良さが光る一台。
日本の軽自動車規格に合わせた、実用的でシンプルなスーパーハイトワゴン。EVらしいグリルレスでクリーンなフロントマスクに、コの字型のLEDランプが個性を添える。コンパクトながらも存在感と利便性を両立したデザイン。
| グレード | 価格 | CEV補助金 | 航続距離(WLTC) | バッテリー容量 | 主な特徴 |
| RACCO 200 | 214万5000円 | 15万円 | 210 km | 22.40 kWh | 街乗りに最適、日常使いに十分な充実の基本装備 |
| RACCO 300Plus | 239万8000円 | 320 km | 35.84 kWh | 長距離も安心の大容量バッテリー、先進安全機能拡充 | |
| RACCO 300Premium | 249万7000円 | 320 km | 35.84 kWh | 上質な合成皮革シート、ハンズフリースライドドア等の上級仕様 |
最安グレードでも、なかなかの装備レベル
最安の「200」でもACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)をはじめ両側電動スライドドア、10.1インチタッチスクリーン、スマホデジタルNFCキー、車外へ給電できるV2L機能、走行用スノーモード、後席サンシェードやプライバシーガラスまで標準装備される破格の充実ぶり。
最上位の「300Premium」では電動の合皮シートに加え、車体下に足先を入れるだけで開閉する足元投影ガイド付きハンズフリースライドドアまで搭載された豪華な仕様となっている。装備内容を率直にいうと、エントリーグレードから、かなり充実している。
水平基調のインパネは、大型タッチスクリーンと小型デジタルメーターが先進的。センターのユニークな電子シフトレバーや、助手席側のオープントレイなど、ミニマルでありながら実用的な収納を多数配置される。
補助金の不利は「装備力」で跳ね返す
さらに驚いたのは、商品コンセプトの説明だ。なんと「こんなカタチの軽自動車で『いちばんいいクルマでありたい』と思いました」と述べるのだ。
これは、言ってみれば、軽EVだけではなく、エンジン車も含めた中で戦う、という宣言にも受け取れる。
実際、スーパーハイトワゴンで実質200万円前後の価格帯は高いわけではない。
ナンバー1のヒットモデルであるホンダ「N-BOX」の価格は176万8800円~282万400万円。つまり主要グレードの多くが200万円台中盤になっている。さらにN-BOXのナビゲーションシステムは、より高機能で凝った内容だが、オプション扱いが多いため、装備揃えでラッコと比べると価格も上がる。
その点、最初からナビをスマートフォンに任せるディスプレイオーディオを標準装備としているラッコは、追加のナビが必要ない分だけ、ここに割安感を感じるユーザーも多いだろう。
ラッコには、ベーシックグレードからディスプレイオーディオが標準装備。ナビ機能はスマートフォンとの連携で賄うことになるが、歓迎というユーザーも多いはずだ。
年1万台が目標。海外勢初の日本専用設計軽EVの未来は?
さらに多くのユーザーが気にしているはずの品質感について。実車を見て触って思ったのは「シンプルですっきりとしている」という印象だ。
エクステリアもインテリアも、デザインはシンプル。日本車と比べてみると、よく言えばスッキリしているし、悪く言えばそっけない。どこか、無印良品的な印象を感じてしまう。このあたりのプレーンな感覚は、このモデルの個性なのだろう。
ドリンクホルダーやシート下格納といったポケッテリア機能や、シートアレンジといった日常生活で触れることが多い実用性の部分に関しては、日本車と遜色ない内容になっている。このあたりは、しっかりと日本車を勉強して、本気で軽自動車市場に参入を考えている、ということを伺える部分だと思う。
ただ、ラッコはEVなので、自宅に充電環境は必須だろうし、航続距離も内燃機車には敵わない。それでも装備内容と価格の面では、十分に日本車のライバルになれる、好素材だった。
売り方次第では「ヒット」の可能性は十分にある、と思う。BYDは、年間1万台を売りたいと言っていたが、それが実現するのか? 今後の売れ行きには大いに注目したい。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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