
ホンダが北米で販売している大型SUV「パスポート」が、日本に導入される。2026年1月の東京オートサロンでは、北米仕様の「PASSPORT TRAILSPORT ELITE(パスポート トレイルスポーツ エリート)」が参考出品され、Hondaは3月、同モデルを日本市場に導入し、2026年後半から発売することを正式に発表した。
全長約4.9m、全幅約2.0mという堂々たるボディに、3.5L V6エンジンを搭載。しかも、オフロード性能を高めた「TrailSport Elite」だ。
いったいどんなSUVなのか。そして、すでに販売されているアメリカではどのように評価されているのだろうか。北米仕様のパスポート TrailSport Eliteの特徴や海外での評価を見ていこう。
●文:月刊自家用車編集部
日本に来るのは「TrailSport Elite」
日本に導入されるのは、北米仕様の「Passport TrailSport Elite」。
Hondaは2026年1月の東京オートサロンで、このモデルを「TRAIL LINE」の象徴的なモデルとして参考出品した。Hondaによれば、TRAIL LINEは、HRCがBAJAレースなどのオフロードレースで培った技術や知見を市販車にフィードバックし、より幅広い走行環境で「意のままに操る喜び」を実現することを目指した新たなラインだという。
Honda Passport TrailSport Elite
単に北米向けSUVを日本へ持ってくるというだけではない。今後Hondaが展開する「TRAIL LINE」のイメージを象徴するモデルとして、日本でお披露目されたクルマでもある。
そしてHondaは3月、「PASSPORT TRAILSPORT ELITE」を2026年後半から日本市場で発売すると正式発表。米国で生産されるモデルを、日本市場へ導入することを明らかにした。
「パスポート」ってどんなクルマ?
パスポートは、Hondaが北米市場で販売している2列5人乗りのミドルサイズSUVだ。
2026年型ではフルモデルチェンジを受け、従来型よりもスクエアで力強いデザインへと大きく変貌した。
3列シートSUVの「Pilot」と同じく北米HondaのSUVラインアップを構成するモデルだが、パスポートは2列シートとし、アウトドア志向を強めている。
特にTrailSportは、単なるデザインパッケージではない。
オフロード向けサスペンション、アンダーボディのスキッドプレート、リカバリーフック、275/60R18サイズのオールテレーンタイヤなどを備え、未舗装路での走破性を高めている。
北米では、街中で使えるSUVでありながら、週末にはキャンプやトレイルへ出かけられる――そんな「日常+アウトドア」の両立を狙ったモデルといえる。
2026年型ホンダ パスポート TrailSport Eliteの主なスペック
| 項目 | 2026年型 Passport TrailSport Elite |
|---|---|
| 全長 | 約4864mm |
| 全幅 | 約2017mm |
| 全高 | 約1857mm |
| ホイールベース | 約2885mm |
| 最低地上高 | 約211mm |
| 乗車定員 | 5名 |
| 車両重量 | 約2134kg |
| エンジン | 3.5L V型6気筒 |
| 最高出力 | 285hp(約289PS) |
| 最大トルク | 262lb-ft(約355Nm) |
| トランスミッション | 10速AT |
| 駆動方式 | AWD |
| タイヤ | 275/60R18 オールテレーン |
| 最大けん引能力 | 約2268kg |
| 米国価格 | 5万4145ドル |
※数値は北米仕様。1インチ=25.4mm、1lb-ft=約1.356Nmとして換算。日本仕様の詳細は今後発表される予定。
3.5L V6+10速ATを搭載
パワーユニットも、日本で販売されているHonda車とはかなり違う。搭載されるのは3.5L V型6気筒エンジン。最高出力は285hp(約289PS)、最大トルクは262lb-ft(約355Nm)を発生し、10速ATを組み合わせる。
駆動方式はAWDで、Hondaの「i-VTM4」と呼ばれるトルクベクタリング式の4輪駆動システムを採用している。2026年型では第2世代のi-VTM4を採用し、トルク容量や応答性を高めている。
また、ボディ剛性を高め、サスペンションも強化。TrailSportには専用チューニングが施され、18インチのオールテレーンタイヤやアンダーボディのスキッドプレートなども装備。
ドライブモードは「Normal」「ECON」「Sport」「Snow」「Trail」「Sand」「Tow」の7種類があり、路面状況や走り方に応じて選択できる。
Honda Passport TrailSport Elite
ただ、海外ユーザーからは「V6ならもう少しパワーが欲しい」という声もある。オーナーのなかにはスポーツモードにすると力強さを感じるという人がいる一方、マツダCX-90の直列6気筒モデルと乗り比べて、パワーやレスポンスに物足りなさを感じたという声も見られる。
米国メディアが実施した長期テストでも、3.5L V6については評価が分かれており、低回転域の力強さをもう少し期待したいという指摘も。重量が約4700ポンド(約2.1トン)に達することもあり、285hpという数字ほど軽快なキャラクターではないようだ。
とはいえ、10速ATとの組み合わせによる滑らかさは評価されている。3.5L V6という排気量から想像するような「豪快な大排気量SUV」というより、快適性や扱いやすさを重視したパワートレインと考えたほうがよさそうだ。
オフロード性能は本物? ランドクルーザーと走り比べると……
TrailSportの名前どおり、本当にオフロードを走れるのか。米国の自動車メディアが行った長期テストでは、パスポート TrailSport Eliteをトヨタ・ランドクルーザーと実際のオフロードコースで比較している。
パスポートは、深い轍や岩場、急勾配の登りなどを含むトレイルに挑戦。最低地上高は8.3インチ(約211mm)で、ランドクルーザーと同じ数値だった。これは、岩や段差、深い轍などで車体の下部を路面にぶつけにくくするためのクリアランスで、オフロード走行では重要なスペックだ。
ただし、同じ数値だからといって「ランドクルーザーと同等の本格的なオフロード性能を持つ」という意味ではない。
比較テストでは、ランドクルーザーがより難易度の高いルートを選択できた一方、パスポートは比較的難易度の低いルートを走行している。また、荒れた岩場では車体下部を路面に接触させる場面もあったようだ。
それでも、一般的なSUVなら躊躇するような場所を大きなトラブルなく走り切ったことで、TrailSportが単なる「見た目だけのオフロード仕様」ではないことは十分に伝わる。
また、オールテレーンタイヤによる悪路でのグリップや、i-VTM4による左右後輪へのトルク配分なども、TrailSportの走破性を支えるポイントだ。
「ランドクルーザーほど本格派ではない」が、普段使いでは強い?
パスポートは、ランドクルーザーやジープ・ラングラーのような「悪路を走ることそのものを最優先したSUV」ではない。むしろ、普段の道路を快適に走りながら、必要になればそれなりに本格的なオフロードにも入っていけるというバランス型だ。
米国の自動車メディアによる長期テストでは、パスポートの広いキャビンや荷室が高く評価されている。荷室容量は後席使用時で44立方フィート、後席を倒すと83立方フィート(約2350L)に達する。
TrailSport Eliteでは、本革シート、前席シートヒーター&ベンチレーション、パノラマムーンルーフ、12.3インチディスプレイ、12スピーカーのBOSEプレミアムサウンドなど、快適装備も充実。海外のオーナーからも、「乗り心地が滑らか」「シートが快適」「室内が広い」「長距離でも疲れにくい」といった声が目立つ。
実際、以前乗っていたSUVと比較して、長距離移動で最も快適なクルマだと評価するオーナーもいる。
PASSPORT TRAILSPORT ELITE
一方で、燃費については不満の声が出やすい。
TrailSportのEPA燃費は市街地18mpg、高速道路23mpg、総合20mpg。28~32mpg程度(約11.9~13.6km/L)走っていたクルマから乗り換えたユーザーにとっては、20mpg(約8.5km/L)前後のパスポートを燃費が悪いと感じるのも無理はないだろう。
海外メディアでは高評価! 2026年の「10Best」にも選出
そんなパスポートが実際にアメリカではどのように評価されているのかというと、かなり高評価なのである。
米国の自動車メディアは、2026年型パスポートを「10Best Trucks and SUVs」ろいう年間ベスト10企画に選出、10点満点の10点となっている。
評価されているのが、タフなデザイン、広い室内、オフロード性能とオンロードでの快適性のバランスだ。
燃費がそれほど高くないこと、ハイブリッド仕様が設定されていないこと、2列シートSUVとしては価格が高めであることなどは弱点として挙げられている。
別の米国自動車メディアによる長期テストでも、パスポートはオフロードでの能力を確認しながら、長距離移動では「快適なロードトリップ車」として評価されている。
まとめると、「本格的に遊べるけれど、普段使いもできるSUV」というところが、パスポートの大きな特徴であり強みといえそうだ。
PASSPORT TRAILSPORT ELITE
日本では「大きさ」と「左ハンドル」がハードル? 価格にも注目
日本で乗る場合に最も気になるのがボディサイズだ。
全幅は79.4インチ、つまり約2.017m。全長も191.5インチで約4.864mある。全長はトヨタ「ランドクルーザー300」より短いものの、全幅は1.980~1.990mのランドクルーザー300を上回る。全幅だけを見れば、ランドクルーザー300に匹敵するどころか、それ以上の大きさだ。
| 項目 | ホンダ パスポート | トヨタ ランドクルーザー300 |
|---|---|---|
| 全長 | 4,864mm | 4,950~4,985mm |
| 全幅 | 2,017mm | 1,980~1,990mm |
| 全高 | 1,857mm | 1,925mm |
Hondaが日本導入を発表した際にも、この数値が北米仕様の参考スペックとして示されている。
全幅2m超というサイズは、日本の一般的な駐車場ではかなり気を使う。狭い立体駐車場や機械式駐車場はもちろん、住宅街の道路や商業施設でも「大きい」と感じる場面は少なくないだろう。
そもそもパスポートは、北米市場の道路環境やユーザーの使い方を前提に開発されたSUVである。北米では、このサイズ感が特別に珍しいわけでもない。
Hondaは今回、米国生産車を日本へ導入するため、国土交通省が新たに創設した米国製乗用車に関する認定制度を活用する。Hondaによれば、Passport TrailSport Eliteは米国のアラバマ四輪車生産工場で生産される。右ハンドル化のための開発・改修を行わず、米国仕様に近い状態で導入できることはメリットが大きい。
PASSPORT TRAILSPORT ELITE
もうひとつ気になるのがステアリング位置だ。東京オートサロン2026で展示されたパスポートは北米仕様車だったため、左ハンドルだった。
Hondaは現時点で日本仕様のステアリング位置を正式には発表していない。ただ、Hondaの松井執行職は自動車専門メディアのインタビューで、パスポートについて「可能であればこのままの形で入れたい」と説明しており、左ハンドルのまま日本に導入される可能性が高いとみられている。
現時点では日本での販売価格は明らかになっていない。
米国での2026年型Passport TrailSport Eliteは、5万4145ドルがメーカー希望小売価格となっている。単純に1ドル=150円で計算すれば約812万円となるが、この数字をそのまま日本価格と考えることはできない。為替レートに加え、輸送費や税金、関税などの通商政策、販売条件などによっても価格は変動する。
今後、価格や販売方法、日本仕様の詳細などが明らかになるとみられる。
日本では大きなボディと燃費、そして価格が気になるところだが、それを補って余りある「北米らしいSUV」を求める人にとっては、かなり気になる存在になりそうだ。今後発表される日本仕様の装備、価格、販売方法に注目したい。
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