![「“パクリ”の声もあった特徴的なテールランプ」53年前のトヨタの名車。ライバル日産と頂点の座を奪い合った[セリカ リフトバック]を紹介](https://jikayosha.jp/main/wp-content/uploads/2026/09/Toyota_Celica_Liftback_200GT_9.jpg)
トヨタを代表するスペシャリティカー、初代「セリカ」には、リアの形状と構造を刷新した派生モデル「リフトバック(LB)」が存在する。場合によってはベースとなったセリカ以上の知名度と人気を誇り、今なお多くのファンを魅了し続けている。本稿では、この「セリカ リフトバック」の足跡と魅力について深く掘り下げていく。
●文:月刊自家用車編集部
ライバル日産との間で激化したGT頂点対決
トヨタのスペシャリティカー「セリカLB 2000GT(RA25型)」が誕生したのは1973年である。 同車は、1970年に登場した初代「セリカ」のバリエーション拡充モデルとしてラインアップに加わった。
独立したトランクスペースを持つ“ノッチバック”スタイルのクーペであった初代セリカの後半部を全面改修し、大型リアガラスごと大きく開くテールゲートを備えた“リフトバック(=LB)”形式へと進歩させたモデルである。
1970年代初頭は、経済の成熟とともにマイカー普及が加速した時代であった。それまでの大衆向けスポーツカーの主流であった1600ccクラスから、より余裕のある2000ccクラスへのステップアップが市場から強く望まれるようになっていた。 対するライバルの日産は、旧プリンス時代に生み出した「スカイライン2000GT」によって同カテゴリーで確固たる地位を築いていた。さらに1972年には4代目となる「C110型スカイライン」へ刷新し、3代目の「2000GT」を市場投入。同じく2.0Lエンジンを積む「フェアレディZ」とともに、スポーツモデルとしてのブランドイメージを強固なものにしていた。この情勢を静観するわけにいかないトヨタは、「セリカ1600GT」で培った地盤の上に、競合を上回るスペックを備えた「2000GT」の展開へと踏み出すこととなる。
トヨタ セリカ クーペ1600GT・TA22型(1970年)
1969年の東京モーターショーに出品された「EX-1」をモチーフに開発された2ドアクーペ。独立したトランク構造を持ち、同期デビューを果たしたカリーナとプラットフォームを共有する。セリカ クーペ1600GTは、通称ダルマセリカとも呼ばれていた。
流麗なデザインで人気の、セリカ クーペ1600GT。
スタイリングの変更にとどまらないパワーユニットの刷新
「セリカ リフトバック」における最大の目玉は、ルーフラインからテールエンドにかけて流れるような傾斜を描く“リフトバック(ハッチバック)”特有の流麗なフォルムにある。だが、本モデルの真価は単なる外観の刷新だけにとどまらなかった。
高出力を生み出す要として、当時の最高峰メカニズムの象徴であった“ツインカム”ヘッドを載せた「18R-G型」を採用。このパワーユニットは、初代「トヨペット・クラウン」に端を発する歴史ある「R型」エンジンの系譜に属し、ボア×ストローク:88.5×80.0mmから1968ccの排気量を誇る「18R型」をベースに開発された。先行して登場していた「2T-G型」と同様の手法を用い、ヤマハ発動機との共同開発によって専用のツインカムヘッドを融合させたものである。最高出力は当時2.0Lクラス最高峰となる145psをマークし、ライバルであるスカイラインの130psを大きく凌駕する走りのポテンシャルを実現した。
もっとも、足回りに関しては課題も残されていた。初代セリカのリアサスペンションがオーソドックスな4リンク式リジッドアクスルにとどまっていたのに対し、競合のC110型スカイラインは既に独立懸架のセミトレーリングアーム式を導入しており、シャシー構造の先進性においては後塵を拝していたと言わざるを得ない。
トヨタ セリカ リフトバック2000GT・RA25型(1974年)
初代セリカのモデルラインアップにおいて絶大な支持を獲得した最高峰グレード。スカイラインを打倒すべく開発されたフラッグシップモデルである。
特に人気の高い、セリカ リフトバック2000GT。
当時はクラス最強を誇る145PSを絞り出した、2000GTに搭載された18R-G型エンジン。
「クーペ(ダルマセリカ)」と「リフトバック」に隠された数々の相違点
初代「セリカ」と、派生型である「LB」の違いについて、「単にリア後部をハッチバック化しただけ」と捉える向きは少なくない。だが実際には、細部にわたり数々の専用設計が施されている。
その違いはフロントマスクの段階から始まっている。ヘッドランプやバンパーといった主要部品の意匠を共有しているため一見すると見分けにくいが、前輪中心からボディ前端までの長さを示す“フロントオーバーハング”は、クーペの765mmから70mm延長された835mmに設定された。これに伴い、くの字状に尖っていた先端部分がフラットな形状へと改められ、洗練されたモダンな表情を獲得。丸型4灯ライトの間に位置するグリル幅も拡張されており、車体全体から醸し出される雰囲気を巧みに変化させている。
一方で、引き伸ばされたフロント部とは対照的に、リアオーバーハングはクーペの975mmから20mm短縮した955mmへと切り詰められた。この絶妙な前後比率によりロングノーズ・ショートデッキのシルエットが強調され、リフトバック形式と相まって「フェアレディZ」を直接のターゲットとして意識した姿勢が見て取れる。
「クーペ(ダルマセリカ)」と「リフトバック」の違い
セリカ クーペ1600GTと比較してグリルまわりの立体感が増し、中央部が突き出した力強いアメリカンマッスルカー風のフロントマスクを備えるセリカ リフトバック2000GT。より大型な2000ccエンジン(18R-G型)の搭載を前提に設計されたため、フロントオーバーハングが数センチ延長され、美麗なロングノーズを形成している。
LB(リフトバック)には、4本スポーク形状のステアリングを採用。GTグレードには本革巻きが用意された。インパネ周りの計器配置はクーペと共通で、シフトレバー前方には灰皿が配置されている。また、通気性を高めるエアホールが配されたハイバックフロントシートは、セリカ LB専用となっている。シートの前後スライド調整幅は160mmに設定されている。
セリカ リフトバックのステアリングは、4本スポークを採用する。
セリカ リフトバックには、専用のシートが与えられている。
模倣と評された個性的なリヤビューの真実
「セリカ リフトバック」のアイデンティティを確立させたのは、車名の由来でもあるリフトバックの造形だけではない。切り落とされたリアエンドから跳ね上がるように伸びる“ダックテール”の造形、そして片側5本の縦スリットで構成された特徴的なテールランプのデザインは、多くのスポーツカーフリークを魅了した。
だが、話題を集める一方で批判的な視線も向けられることとなる。このリアまわりの意匠が「フォード・マスタング・ファストバック」に似ているとして、「デザインの盗用ではないか」という声が一部で囁かれたのである。1969年に登場した「マスタング・ファストバック」とのタイムラグを考慮すれば、模倣と勘ぐられても仕方のない面があり、当時の国内メーカーが広くアメリカ車をデザインの規範としていたのも事実である。しかし、「LB」の原型となったコンセプトカー「SV-1」では一体型のテールランプが採用されていた。その後の量産化にあたり、既存のセリカとの明確な差別化を図る過程で、より個性の強い現行のデザインへと変更されたというのが真相と考えられる。
セリカ リフトバックのリアデザイン。
トヨタ EX-1(1969年)
セリカのルーツに位置するコンセプトカー「EX-1」(1969年)は、LBに通じるファストバックスタイルを備えていた。しかし、同年登場の2代目フォード・マスタングも同様のファストバック形状を採用していたため、デザインの模倣疑惑が浮上する一因となった。
セリカのルーツとなったコンセプトモデル、EX-1。
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