“映えない部品”が主役の「人とくるまのテクノロジー展2026」。マニア必見、今年の自動車メーカーの推し技術をレポート!│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

“映えない部品”が主役の「人とくるまのテクノロジー展2026」。マニア必見、今年の自動車メーカーの推し技術をレポート!

“映えない部品”が主役の「人とくるまのテクノロジー展2026」。マニア必見、今年の自動車メーカーの推し技術をレポート!

3日間で約8万人を動員する恒例の注目自動車関連イベントが「人とくるまのテクノロジー展」だ。先日、横浜でのリアル開催は終了したが、その会場で見つけた興味深い最先端の技術の数々をピックアップ。クルマの進化はまだまだ止まらない!そんな未来を期待させる内容だったのだ。

●文:横田晃/月刊自家用車編集部

パシフィコ横浜に、クルマ関連企業612社が集結

今や人気観光地となったみなとみらい地区にある見本市会場、パシフィコ横浜で、去る5月27~29日に開催された「人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA」も盛況のうちに幕を閉じたが、昨秋のモビリティショーや新年のオートサロンのような大掛かりな報道はほとんどなかった。

それもそのはずで、広い会場には、普通のクルマ好きやユーザーの興味を引くような、新型車やスポーツカーの華やかな展示は皆無。完成車メーカーやそこに主要部品を納める大手部品・素材メーカーを除けば、出展しているのは海外を含めて、街の小売店ではまず名前を見ることがない企業や研究機関だ。ひとつひとつのブースも、6畳間程度のこじんまりとしたものがぎっしり並んでいる。今年の横浜では、共同出展を含めて過去最大の612社による1516小間が出展されたという。

そこで紹介されているのは、クルマのどこに使われているのか、素人には見当もつかない樹脂や金属の部品に、内外装に使われている新素材。各種の歯車、電線やコネクター、半導体のチップに、その中に仕込まれている小さな基盤などもある。開発中のクルマのテストをするための計測機材もあるし、金属の表面処理技術や、クルマを制御する電子回路の誤作動や乗っ取りを防ぐセキュリティ技術の展示もあった。鉄鋼メーカーのブースには、ピラーなどに使われている高強度の鋼板と、それをきれいに溶接するための技術がセットで展示されていたりする。

つまり会場には、近未来車を含む、クルマを全バラにした部品やそれを開発するための装置類が、ほぼすべて揃っている。ただし、絵ヅラ的にはまったく“映えない”ものばかり。なるほどTVでは扱いにくい素材だが、その価値を理解できる人にとっては、ここは宝の山だ。

イベントを主催しているのは、公益社団法人自動車技術会。1947年(昭和22年)に設立され、自動車に係わる研究者、技術者、及び学生の会員約42,500名、企業会員約770社から構成される、工学系ではわが国最大の学術団体という。“学術文化の振興及び産業経済の発展並びに国民生活の向上に寄与すること”を目的として、研究成果を発表する講演会の開催、課題や将来技術の調査研究、次世代技術者の育成、出版物の刊行、優れた研究業績の表彰・奨励、自動車関連規格の制定、関連機関・団体との連携・交流を推進している。「人とくるまのテクノロジー展」の開催も、その一環だ。

「人とくるまのテクノロジー展」は、主に自動車産業の業界人や、自動車技術者を目指す工学系の専門学校や大学の学生が、最新の技術や素材、ツールや共同開発者などを求めて足を運ぶ展示会だから、完成したクルマよりも、それを構成する部品や素材、技術などが主役になるというわけだ。それらの展示内容は別の記事(https://jikayosha.jp/2026/05/29/310548/)(https://jikayosha.jp/2026/05/29/310448/)で紹介しているが、もちろん自動車メーカーも出展している。

トヨタ:新型RAV4 PHEVに搭載される新技術を展示

トヨタのブースには、ネットから新しい機能性能をダウンロードすることで、クルマがつねに最新の状態を保つ、SDVを実現するトヨタ独自のソフトウェア開発プラットフォーム、Arene(アリーン)で開発された新型RAV4PHEVを展示。そこに使われている第6世代ハイブリッド技術や、より使いやすく、高性能になった運転支援システムの新型トヨタセーフティセンスを紹介。さらに名古屋大学との共同研究による、加齢に伴う運転能力の衰えを測定した結果と、運転能力を補って事故死者ゼロを目指す車両技術の研究も展示していた。

トヨタブースでは、最新PHEVシステムを搭載した現行RAV4のPHEVモデルを展示。

トヨタの第6世代ハイブリッドを基盤とする新PHEVシステムは、DC/DCコンバーターをPCU内に統合して主要部品をエンジンルームへ集約し、室内空間を拡大。さらに大容量リチウムイオン電池の新開発やSiC半導体の採用により、EV走行距離を従来の95kmから151kmへ延伸している。

RAV4に搭載された最新トヨタセーフティセンスは、カメラやレーダーの画素数・検知範囲を拡大し、複数ECUをドメインコンピューターへ統合。アルゴリズム刷新により、交差点衝突回避やペダル踏み間違い、プロアクティブな運転支援、レーンチェンジ等の機能が強化されている。

交通事故ゼロを目的に取り組まれている三位一体の自動運転については、インフラとドライバーの協調が重要という。アクティブラーニンググループで得られるデータをもとに、AIが絶えず学習と改善を繰り返すことで、自動運転の性能と安全性を永続的に進化させ続ける仕組みを模索しているとのこと。

センサーで死角の危険を察知し、LED表示板や無線通信で周囲にリアルタイムで伝える「ITSスマートポール」は道路側インフラのキーアイテムになるという。

日産:AIを利用する、未来の制御技術を大きくアピール

日産でも独自のSDVプラットフォームをパネル掲示。AI技術を搭載した次世代ProPILOTや、乗員の意図をくみ取ってサポートするAIパートナー技術を搭載した試作車も展示。新型リーフの3-in-1EVパワートレインとバッテリーに、第三世代となるe-POWERの、減速機とインバーター、モーター、発電機、増速機を一体化した5-in-1パワートレイン、2028年度の市場投入を目指す全固体電池といった、得意の電動化技術をアピールしていた。

日産の「AIドライブ技術」は、プロパイロットで培った車両制御と最先端AIを組み合わせ、一般道を含むドアツードアの運転支援を実現する技術。大量のデータから学ぶ「End to End AI自動運転」により、11個のカメラ等で周囲を360度把握し、熟練ドライバーのように安全な運転判断を行うという。実用化の暁には、複雑な交差点や歩行者保護にもより高いレベルで対応できるほか、将来的にはレベル4ロボタクシーへの展開も可能。

日産の「AIパートナー技術」は、車内とクラウドのAIが密に連携し、乗員の意図を汲み取って先回りした提案を行う技術。具体的な一例としては、車内の会話やメッセージから状況を理解して適切なルート変更を提案するほか、ドライバーが見ている景色への質問に答えたり、旅の記録を自動作成することが可能という。

「次世代プロパイロット」は、高速道路だけでなく一般道を含む「ドアツードア」の運転支援を目指す新技術。2027年度の市販車搭載に向けて開発が進められている。

新型エルグランドに搭載される「第3世代 e-POWER」は、5つの構成部品を一体化した「5-in-1 電動ユニット」と、高効率な「発電特化型エンジン」を組み合わせた最新のハイブリッドシステム。ユニットの一体化により小型&高剛性化を実現したほか、車体との共振を抑えることで、静粛性も大幅に向上するという。

現行リーフに搭載された3-in-1 EVパワートレーンは、モーター、インバーター、減速機の3部品を一体化することで、小型・高剛性化を実現した最新システム。占積率の高い平角線コイルのモーターや、両面冷却構造のインバーター、フリクションを低減した減速機を採用することで、すばやく力強く、なめらかな加速性能を実現。

ホンダ:話題沸騰中のSuper-ONEを中心とした電動技術を展示

ホンダブースは、自動車メディア業界でも購入者が相次いでいる小型EVのSuper-ONEと、それを楽しむための充電インフラ、Honda Chargeを柱に、軽2輪クラスの電動バイクWN7も展示。交通事故死者ゼロを目指した次世代運転支援技術や自動運転技術、クルマやバイクに使われている素材の回収・リサイクル技術の展示も、このイベントらしいところだ。

ホンダの「Super-ONE」は、電動化時代においても「意のままに操る喜び」を追求したFUNな電気自動車。仮想有段シフト制御とパドルシフトによる変速体感が楽しめたり、ハンドルにある「BOOST」スイッチを入れることで、電流制限が開放されて出力が拡大する機能を備えるなど、内燃機スポーツに近い「走り味」が楽しめることが特徴。

ホンダ純正の「Honda V2H Stand」は、EVへの充電と家庭への放電ができる双方向タイプの充放電器。ホンダEVと接続することで停電時の非常用電源として活用できるほか、最大5.9kWの出力に対応するなど、従来の普通充電器に比べて約半分の時間で充電も可能。

ホンダの電動ネイキッド「Honda WN7」は、固定式リチウムイオン電池を搭載し、4輪と同じインフラで充電できる初の電動モーターサイクル。新開発のインバーター一体型水冷モーターにより、最高出力は排気量600cc、最大トルクは1000ccのガソリン車に匹敵するとのこと。ベルトドライブシステム等の採用で高い静粛性を実現するほか、分割フレームによる良好な足つき性や軽快なハンドリング、航続距離140kmなど、操る楽しさと環境性能を両立させている。

マツダ:性能強化を支える基礎技術をアピール

新型CX-5を置いたマツダブースでは、空調エネルギーを低減するために窓ガラスの曇りを防止するコーティングや、エンジン内の部品に施工することで熱効率を上げるコーティングなどの、地道な技術が展示の柱。

マツダの「高応答遮熱コーティング」は、燃焼室壁面に施工することで、エンジン熱効率を高める技術。壁面温度を燃焼ガス温度に高速追従させて温度差を減らし、冷却損失を抑えることで燃費向上を狙う仕組み。

乗員由来の湿気を吸収・放出する柔軟な吸水機能と、自動車用途に必要な高い耐久性(耐傷付性・耐候性)を両立した防曇コーティングを開発。これにより外気導入量を減らして空調電力を大幅に削減することが可能になるという。センサーやミラー等への応用も可能。

スバル:最新ストロングハイブリッド「S:HEV」のカットモデルを展示

スバルは機械式にこだわったシンメトリカルAWDシステムに、2つのモーターを組み込んだ独自のストロングハイブリッドシステム、S:HEVの実物を展示。

S:HEVの内部構造の仕組みを確認できるカットモデルには、多くの来場者が注目。シンメトリカルAWDとの親和性の高さにより、幅広い道路状況でも優れた走行安定性を確保できることもアピールしていた。

三菱:S-AWCの優位性を大きくアピール

三菱ブースでは主要部分を内部構造が分かるようスケルトン化したデリカD:5を中心に、長年培ってきた4輪を緻密に制御するS-AWC技術をわかりやすく表現していた。

最新世代のS-AWCは「知能化技術」と「電動化技術」を取り入れることでさらなる進化を達成。知能化では、走行環境や路面状況の分析技術向上により、最適なドライブモードの提案や自動切替を実現し、電動化では、さらなるレスポンス向上に加え、デュアルモーターAYCによる旋回性や走破性の向上、4輪自在な駆動力制御などを可能としている。

スズキ:農家を想定したエコシステムを提案

スズキブースに置かれた軽トラックのキャリイは、CO₂を回収して農作物の成長促進に再利用するという、農家を想定したエコシステムを提案。スズキが長年培ってきた電動車いすの技術を活用した、多目的に使える電動台車、MITRAは、点検や運搬などの現場ですでに実証が進められているという。

「CARBON CAPTURE CARRY」は、軽トラックのスーパーキャリイにCO₂回収装置を搭載する技術。農作業や移動時の排気ガスから吸湿材と吸着材を用いて高効率にCO₂を回収し、ビニールハウスの農作物成長促進へ活用することを想定したとのこと。さらにカーボンニュートラル燃料(CNF)と組み合わせることで、カーボンネガティブを目指し、環境負荷低減と灯油消費削減による経済効果の両立も考慮されている。

スズキの多目的電動台車「MITRA」は、電動車いす開発の知見を活かした屋外環境向けのモビリティ。前後左右のサスペンションや独立モーター、パワーステアリング、防錆・防水・防塵設計により、段差や不整地でも安定した走行と高い操作性を実現。汎用的な「ロボットの足」として、パートナー企業のロボティクス技術と組み合わせることで、製造業の点検、物流の自動配送、農業のセンシングなど様々な現場への実装を想定している。

ダイハツ:最新の軽商用BEVバン「e-アトレー」を実車展示

ダイハツでは、ロッキーで好評のシリーズ式のe-SMART HYBRIDをベースとした軽自動車用ハイブリッドシステムを展示したほか、低速モビリティのe-SNEAKERやEVを核とした直流主体のマイクログリッドシステムも掲示した。

軽商用BEVバン「e-アトレー」は、新開発の「e-SMART ELECTRIC」を搭載した軽商用電気自動車。薄型LFPバッテリーを床下に配置することで、ガソリン車と同等の広い積載スペースと低重心による優れた操縦性を両立。一充電走行距離は257kmに達し、100%モーター走行による力強い加速と高い静粛性を実現。さらに、最大1500Wの外部給電機能や普通・急速充電、V2Hにも全車標準で対応する。

「e-SNEAKER」は、自転車に近い高い目線と、3段階にシート高を調整できるスタイリッシュな小型モビリティ。簡単な3ステップ操作で運転でき、持ち運びしやすい2.5kgの脱着式軽量バッテリーを搭載。約2.5時間の満充電で12km連続走行が可能。大径タイヤによる高い段差走破性に加え、急斜面検知や急旋回時の速度抑制機能など、利用者が安心して移動できる工夫も注がれている。

これまで培った電動車開発のノウハウや既存の自動車部品を応用し、直流を主体とした効率的なシステムを開発。従来システムに比べてエネルギー損失が約45%削減したほか、システム自体も約1/10のコンパクト化を実現。

「人とくるまのテクノロジー展」は、全体的には専門家向けの内容だが、主催者の自動車技術会によれば、将来自動車業界での就職を目指す文系の若者や子ども、出展企業の実力を見たい投資家などの来場も歓迎するとのこと。来場にはネットからの事前登録が必要だが、入場自体は無料だ。6月17~19日にはAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)でも開催されるほか、6月10日~7月1日までは、オンラインでも開催されている。

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