
●文:[クリエイターチャンネル] Peacock Blue K.K.
冬は寒さによってクルマにはさまざまな負担がかかってしまいますが、その中でも特に身近な車両トラブルが”バッテリー上がり”です。
寒冷な気温が続く季節において、クルマのエンジンをかける際にバッテリーの電力が不足し、思うようにエンジンがかからないという状況がより一層起こりやすくなります。
またクルマのバッテリー上がりは、通常よりもエンジンの始動に電気を必要とする冬に起きやすい傾向にあるようですが、いったいなぜなのでしょうか。
身近な車両トラブル”バッテリー上がり”とは?
バッテリー上がりは、自動車のバッテリーが十分な電力を供給できずエンジンを始動することができなくなる状態を指します。
またバッテリー上がりを繰り返すとエンジンが始動できないだけでなく、バッテリーの寿命を縮めることにもつながってしまいます。
バッテリー上がりの要因は、大きく3つに分けられます。
まずひとつ目の原因は、バッテリーの過放電です。
実際、JAFのロードサービスが要請される場面において最も多いのがバッテリー上がりによる故障となっており、その中で最も多い原因がバッテリーの過放電です。
JAFが公表するデータによると、2022年度に発生した2,195,442件の要請のうちバッテリー上がりは40.55%を占めていると言います。
エンジンは、走行中に発生した電気を蓄電池に貯めて活用する仕組みになっています。
そのため、停車中のライト/室内灯の消し忘れ/半ドアによる室内灯の点灯が起こってしまうと電気が過剰に消費されてしまい、エンジンをかける際の電気がなくなってしまうというわけです。
室内灯のつけっぱなしはバッテリーの寿命に大きく影響する
特に冬場はエンジン始動に必要な電力が多いため、少しの放電でバッテリーが上がってしまうので、ライトの消し忘れだけでなく暖房/オーディオのつけっぱなしなど、停車中の行動には注意しましょう。
2つ目の原因は、低温によるバッテリー劣化です。
気温の低下が続くとバッテリーの性能が低下し、エンジン始動に必要な電力が不足しやすくなるのですが、これはバッテリーが電気化学反応によって電力を生成することが関係しています。
バッテリー内の電解液は、水と酸性物質から成り立っています。
バッテリーが放電した状態で極端に気温が低下すると、電解液の成分比率が代わり電解液が凍結する可能性があるため、バッテリーの性能を低下させる要因となってしまうようです。
また電解液が凍結してしまうとバッテリーの内部構造が損傷する可能性が高くなり、充電および放電が阻害される場合があります。
また、気温が低いと反応速度が低下しバッテリーが効率的に電力を供給できなくなります。
エンジン始動時に十分な電力が伝達されない状態で、バッテリーが無理にエンジンを始動することでバッテリーが劣化し、バッテリー上がりが発生するというわけです。
そして3つ目の原因は、エンジン不使用期間の影響です。
クルマを長時間エンジンをかけない期間が続くと、バッテリーから放電されやすくなりバッテリー上がりやすくなります。
日常的にエンジンをかけて走行している場合は問題ありませんが、月に数回しかクルマを使用しない人はこの線を疑ってみるとよいかもしれません。
バッテリー上がりを防ぐにはどうしたらいい?
では、バッテリー上がりを防ぐにはどのような点に気をつければよいのでしょうか。
まずひとつ目のポイントは、バッテリーを定期点検/保守すること。
たとえば電圧の測定/液面の確認/充電システムの点検/バッテリーの寿命確認などをおこなって、劣化を未然に防ぎやすくなります。
2つ目は、エンジンの定期的な始動・運転することです。
長期間クルマを使用しない場合でも、定期的にエンジンをかけてバッテリーを充電し、効果的な管理をおこないましょう。
定期的にバッテリーの点検/交換をおこなって、一年を通して安全に運転したいところ
ただここで注意したいのは、アイドリングの状態ではバッテリーに電気が貯まらない点。
むしろアイドリング状態でエアコン/カーナビなどを使用すると、電気が消費されてしまいます。
電気は走行中に蓄積されていくため、エンジンをかけるだけでなく走行することが大切です。
そして3つ目のポイントは、バッテリーの保温対策です。
バッテリー自体の温度が低下してしまうと、性能が十分に発揮されずバッテリー上がりの原因となるため、保温カバーなどを利用してバッテリーの温度管理に留意しましょう。
冬季、バッテリー上がりはドライバーにとって遭遇する可能性が高いトラブルです。
しかし定期的なメンテナンス/対策を講じることで、バッテリー上がりを未然に防ぐことができ快適で安心な冬のカーライフを楽しむことができます。
もちろん冬以外でも発生する可能性があるトラブルなので、クルマの状態は定期的に確認しておくことが求められそうです。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(トリビア)
なぜLEDライトは雪を溶かせないのか? LEDヘッドライトが普及の中心に座り始めて久しい。高い光量と応答性、寿命の長さなど、多くのメリットがあることは自動車好きなら説明不要だろう。しかし冬の寒さが深ま[…]
冬のエアコンは“いきなり全開”が一番ムダになる理由 冬の朝は車内が冷え切り、シートもハンドルも硬く感じる。そんな状況で暖房を思い切り上げてしまうドライバーは少なくない。しかし、暖房はエンジンの排熱を利[…]
フロントガラスが曇るのは「結露」が原因 クルマのフロントガラスが曇る理由は非常にシンプルで、ガラスの表面で結露が起きるからだ。車内の空気には、人の呼吸や汗、濡れた衣類、傘から蒸発する水分など、想像以上[…]
「前向き駐車お願いします」――気になる張り紙の正体 商業施設の駐車場で「前向き駐車にご協力ください」と書かれた看板を見たことがある人は多いだろう。だがその意味をきちんと理解している人は意外と少ないので[…]
「もみじマーク」の正体とは 多くの人が“もみじマーク”と呼ぶこのマークは、正式名称を「高齢運転者標識」という。一定の年齢に達したドライバーが運転していることを周囲に知らせ、安全運転を促すためのものだ。[…]
最新の関連記事(カー用品)
「堂々・威厳」をデザインコンセプトに開発 このCR-V用純正アクセサリーは「堂々・威厳」をデザインコンセプトに開発。スポーティーで洗練された印象の「アーバンプレミアム」と、さらなる風格とタフな存在感を[…]
わさびを主成分とした抗菌剤で、エアコン内部のニオイを抑制 エアコンフィルターに装着して除菌消臭効果を格段に向上させるという製品が、自動車部品のグローバルメーカーValeoのわさびデェールだ。この製品は[…]
香りを切り替えられるフレグランスディフューザー モビリティショーで唯一、カー用品メーカーとして出展していたのがカーメイトだ。幅広いジャンルの商品を手掛けている同社だけに興味深いモデルが数多く見られるこ[…]
ホンダカスタムを牽引する2強が、ブランドの垣根を超えて協力 2025年11月30日(日)、日本のモータースポーツの聖地の一つ、モビリティリゾートもてぎの南コースにて、ホンダ車の純正カスタマイズを担う二[…]
ドリンクホルダー不足は意外と深刻な“あるある問題” クルマの中にあるドリンクホルダーは、飲み物だけを置くものではない。小腹を満たすスナック、ボトル入りガム、灰皿、芳香剤など、実際は“なんでも置き場”と[…]
人気記事ランキング(全体)
冬のエアコンは“いきなり全開”が一番ムダになる理由 冬の朝は車内が冷え切り、シートもハンドルも硬く感じる。そんな状況で暖房を思い切り上げてしまうドライバーは少なくない。しかし、暖房はエンジンの排熱を利[…]
固着したネジが動かない…作業を止める小さな“壁” どれほど簡単な整備手順でも、一本のネジが固着しているだけで作業は急に難しくなる。サビが食い込み、雨ざらしのボルトが内部で膨張し、樹脂パーツとの隙間に汚[…]
わさびを主成分とした抗菌剤で、エアコン内部のニオイを抑制 エアコンフィルターに装着して除菌消臭効果を格段に向上させるという製品が、自動車部品のグローバルメーカーValeoのわさびデェールだ。この製品は[…]
予想外のトラブルに備える、小さな“安心材料” クルマに乗っていると、どれだけ用心していても避けられない出来事がある。釘を踏み抜くパンクや、走行中の異物接触、さらには路肩での急な停車など、経験した人なら[…]
一見、何に使うかわからないが、活用の幅は広いアイテム 今回紹介するのは、様々なカー用品を多数リリースするカーメイトのグッズだ。商品の写真や装着した写真だけを見ても、どうやって使用するのかわかりにくいか[…]
最新の投稿記事(全体)
目玉の「ミゼットX 大阪Ver.」には、ダイハツの地元を象徴する大阪城マークを採用 出展テーマは“わたしにダイハツメイ。小さいからこそできること。小さいことからひとつずつ。”とし、「わたしにぴったり」[…]
BEVでも「走りの楽しさ」は深化できる このモデルはマスタードライバーを務めるモリゾウ(豊田章男会長)の「クルマ屋が残していくべき技術・技能を次の世代に受け継がなければならない」という強い想いのもと、[…]
モータースポーツを起点とした「もっといいクルマづくり」を結集 今回、TGRが発表した2台のハイパースポーツは、TGRが目指している「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を深化させ、GR[…]
トヨタのレジェンドモデルが高速走行を繰り広げる! 今回発表された「GR GT」は単なる新しいスポーツカーではない。TOYOTA 2000GT、Lexus LFAと続いてきた系譜を継ぐ、トヨタの思いが込[…]
固着したネジが動かない…作業を止める小さな“壁” どれほど簡単な整備手順でも、一本のネジが固着しているだけで作業は急に難しくなる。サビが食い込み、雨ざらしのボルトが内部で膨張し、樹脂パーツとの隙間に汚[…]
- 1
- 2


















