
ダイハツから軽商用EVの「e-ハイゼット」と「e-アトレー」が登場した。登場するまでの背景と、その内容、そして、どのような走りであったのかをレポートしよう。
●文/写真:鈴木ケンイチ
「積載」のハイゼットか「趣味」のアトレーか? 選べる2つのキャラクター
ダイハツから発売された「e-ハイゼット」と「e-アトレー」。
主に装備機能で差別化されていて、パワーユニットは共通。キャラ付けとして「積載性」か「快適性」かという点が、最大の違いと考えていい。「e-ハイゼット」は、純粋なビジネスモデル。「e-アトレー」は趣味の道具車としても使えるという立ち位置だ。
ダイハツ、トヨタ、スズキの3社合同の開発モデルとして登場したe-ハイゼット/e-アトレー。軽バン特有の使い勝手の良さを維持しつつ、電気自動車ならではの静粛性と力強い走行性能を両立させている。撮影車はe-アトレー RSで価格は346万5000円。
パワーユニットは、両モデルともに共通で36.6kWhのリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池と、最高出力47kW(64PS)/最大トルク126Nmのインバーターとモーター一体型のeAxle(イーアクスル)からなるEVシステムを搭載。一充電あたり257㎞(WLTCモード)のEV走行を可能としている。
駆動方式は、2WDの後輪駆動のみ。普通充電と急速充電、そしてAC100V・1500Wの外部給電機能を全車標準装備している。V2H機能も備えるなど、専用器具を用意すればオール電化住宅へ接続することも可能だ。
価格は「e-ハイゼット」が314万6000円、「e-アトレー」が346万5000円。国のCEV補助金は、現状では不明だが、昨年の他メーカーの実績を考えれば50万円程度は期待できる。補助金をあわせれば300万円以下で購入することができそうだ。
なお「e-ハイゼット」と「e-アトレー」の生産は、ダイハツの大分(中津)第1工場で行われる。注目したいのは、このモデルは、トヨタとスズキとの共同開発モデルということで、具体的には、車体まわりはダイハツが担当するが、バッテリーやモーターなどのEVシステムは、3メーカー共同で開発されている。
e-アトレーは、趣味の道具車ニーズも考慮して、乗用モデル的な加飾もプラス。
インパネの正面の一番使いやすい場所にAC100V・1500Wのコンセントを配置するなど、利便性を考慮したレイアウトも特徴になる。
フロントシートには、なかなか凝った加飾がプラスされる。ほかにも両側パワードアなど内外装の質感を高めることで、ベース車のアトレーと同様に幅広いユーザー層からの乗用ニーズにも対応している。
低重心が生む抜群の安定感。エンジン車からの乗り換えも違和感なし
そんな背景のもとに生まれた「e-ハイゼット」「e-アトレー」は、どのような走りを見せるのだろうか?
まず、走り始めのスムーズさと力強さは、さすがEV ! と感心させられる。
「e-ハイゼット」「e-アトレー」はEV化により、車両重量がエンジン車よりも350㎏ほども増えているけれど、モーターのトルクはエンジン車の約2倍。そのため加速力は、驚くほどに力強い。
そして、ボディの剛性感と安定感が高いことにも感心させられる。車体床面の半分以上を占めている駆動用バッテリーケースが車体のブレースも兼ねた構造部材となっており、とにかくがっしりした印象。さらに重心も低いため安定感も抜群というわけだ。
安全性の高いリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池を用いた大容量36.6kWhの薄型バッテリーを、床下に配置。一充電走行距離257km(WLTCモード)を達成している。
サスペンションのスプリングレート(バネ定数)は上がっているけれど、車体剛性が高いため足もよく動く。フラットな姿勢を保ちやすく、段差の突き上げなどの不快感も少なめ。ハンドリングは基本的にアンダー気味だが、それはそれで安心感にも繋がっている。
アクセルを戻した時の回生ブレーキの効き具合も好感。エンジン車に慣れたユーザーでも違和感は感じにくいちょうど良いレベルで、回生ブレーキに慣れたユーザーなら使いやすいと感じてもらえそうな絶妙な塩梅だ。ダイハツの開発陣によると「荷物が荷崩れしない効き目を狙っている」とのこと。
さすがに高速道路では時速80㎞以上の伸びに物足りなさを感じるなど、乗用車系のEVとは違った特性も見えてくるが、ラストワンマイルの配送ニーズを狙うという目的を考えれば、全体的に街中重視のセッティングとなっているのは納得できる。
車外へ電源コードを引き出せる外部給電アタッチメントや、V2H対応の急速充電インレット(CHAdeMO規格)も用意される。
きわだつ静粛性と低振動。「疲れにくい」恩恵がありがたい
試乗後の印象で真っ先に感じたのは、「運転時の疲労度はエンジン車よりも少ない」ということだった。その理由としては、エンジン特有の振動や騒音がないことや、扱いやすい回生ブレーキの恩恵も挙げられるが、なにより想像していた以上に乗り心地が良い。
さらにシートヒーター完備で冬場の快適性もしっかりしているし、インパネの正面の一番使いやすい場所にAC100V・1500Wのコンセントがあるので、パソコンやスマートフォン、空調ジャケットの充電なども不安がない。つまり、仕事のクルマとして本当によくできている。
今年は「e-ハイゼット」「e-アトレー」だけでなく、BYDからも軽EV「ラッコ」、ホンダからスポーティな軽EV「Super-ONE」も登場する。方向性がかなり違うとはいえ、同カテゴリーのライバルが増えるほどに市場の注目度が高まり、売れ行きが伸びるもの。ラインナップが充実していけば、多彩なユーザーニーズに応えることもできるようになり、さらにその注目度も上がっていく。これからの軽EVマーケットの活性化は間違いなさそうだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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