
国産スポーツカーが「ロングノーズ・ショートデッキ」という黄金律を手に入れ、直感的な美しさを確立した金字塔――それが初代S30型フェアレディZである。その華々しい系譜の中でも、ひときわ硬派で異質な輝きを放っていたのが、フラッグシップの「Z432」だ。
●文:月刊自家用車編集部
伝統の血統と「究極のスパルタン」
「フェアレディ(貴婦人)」という優雅な名に反し、その中身は一貫して硬派なパイオニアの血脈を継承している。その祖先はダットサンスポーツSPL212にまで遡るが、市販スポーツカーとしての地位を決定づけたのは、1967年に登場したフェアレディ2000(SR311型)に他ならない。快適性など微塵も顧みないそのスパルタンな走りは、まさに「最後の個性派スポーツ」と呼ぶにふさわしい凄みを備えていた。
ダットサンスポーツ時代からフェアレディのメイン市場は北米。フェアレディSP310も国内向けと同時に輸出用(SPL310)を発表。北米で評判になった。その後、2Lに排気量アップされたSR311型。
このアグレッシブな性能は、国内以上に北米市場で熱狂的に支持される。欧米のコンバーチブル勢を圧倒する勢いでトップカテゴリーへと躍り出たその実績を背景に、日産が1970年代の世界市場を制覇すべく放った戦略的一手が、クローズドボディを纏った新時代の量産スポーツ、S30型フェアレディZであった。
S30型フェアレディZは、開発当初から他車との部品共通化で原価を安く抑えることを目指した。とりわけブルーバード510とはシャシーをはじめ多くの共用関係にある。
Z432:スカイラインGT-Rの心臓を持つフラッグシップ
S30型の象徴である長いボンネットの下には、当初2種類の2L直列6気筒エンジンが収められた。
- L20型(SOHC): SUツインキャブを備えた量販の中核モデル。
- S20型(DOHC): スカイラインGT-R(ハコスカ)と共通の心臓部を持つ特別なエンジン。
このS20型を搭載した最高峰グレードこそが「Z432」である。その名は、4バルブ・3連ソレックスキャブ・ツインカム(2カム)というエンジンの機構に由来し、シリーズ最強のスペックであることを雄弁に物語っていた。
スカイラインGT-R(ハコスカ)にも搭載されていたS20型エンジンは、1気筒あたり4バルブを持つ2LのDOHCエンジン。
日産 フェアレディZ432(1971年式)
レース界を席巻したスカイラインGT-R(ハコスカ)と同じS20型2L DOHCエンジンを搭載したS30型フェアレディZのフラッグシップ432。そのネーミングは「4バルブ・3連ソレックスキャブ・ツインカムシャフト」に由来する。
【主要諸元】
●全長×全幅×全高:4115㎜×1630㎜×1290㎜ ●ホイールベース:2305㎜ ●車両重量:1040㎏ ●エンジン(S20型):水冷直列6気筒DOHC1989㏄ ●最高出力:160PS/7000rpm ●最大トルク:18.0㎏-m/5600rpm ●最高速度:210㎞/h ●0-400m加速:15.8秒 ●最小回転半径:4.8m ●燃料タンク容量:60L ●サスペンション:前後ストラット式 ●ブレーキ:前ディスク/後ドラム ●トランスミッション:5速MT ●タイヤサイズ:6.95-14-4PR ●乗車定員:2名 ◎新車当時価格:185万円(マグネシウムホイール付)
車内に目を移すと、彫りの深い造形のダッシュボードに取り付けられた独立型3連メーターが印象的。ちなみにこれは、右から「水温/油温計、電流/燃料計、油圧計」の順に並んでいる。また、黒で統一されたインテリアも、ドライバーにやる気を起こさせる。ヘッドレスト一体型バケットシートはリクライニングも可能。
高級GTとしての矜持と、240Zとの相克
レースでの勝利を至上命題としたGT-Rに対し、Z432はあくまで高性能な「グランドツーリングカー」としての完成度を追求していた。内装はラグジュアリー仕様に準じた設えとなっており、日常の足としても機能する柔軟さを併せ持っていたのである。
長いボンネットとコンパクトな居住空間、誰もが直感的に納得するカッコよさというスポーツカーの定型を、国産車として最初に体現したモデルが、初代フェアレディZ(S30型)。Z432はスカイラインGT- Rと同じS20型エンジンを搭載していることでも有名。
価格はベースモデルの約2倍に相当する185万円。標準でLSDやマグネシウム製ホイールを備えるなど、日産の技術と贅を尽くした超高級車であった。しかし、その後の展開は皮肉なものとなる…。
- 240Zの登場: 2年後に北米仕様の2.4Lモデルが国内投入されると、排気量の余裕が生む豊かなトルクにより、「扱いやすさ」という面で240Zが市場から高い評価を得る。
- 432Rの存在: 競技用ベースとして徹底的な軽量化を施した「432R」も存在したが、公道登録された個体は極めて少ない。
対米輸出から2年遅れて日本でも発売となった240Z。240Z-Gはその上級グレードで、FRPのGノーズとヘッドライトカバー、オーバーフェンダーを持ち、25㎏重いにもかかわらず、向上した空力で最高時速は432と同じく210㎞/hを誇った。
歴史に刻まれた偉大な足跡
S30型フェアレディZは、9年という長期間にわたって生産され、世界累計販売台数52万台というスポーツカー史上空前の記録を樹立した。日産を世界的なブランドへと押し上げた立役者である。
その巨大なピラミッドの頂点に君臨したZ432の生産台数は、わずか419台。レーシングカー直系の高回転域の吹け上がりと官能的なサウンドは、今なお語り継がれる伝説となっている。
フェアレディZ432のエンブレム。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(旧車FAN)
日米欧の名車約120台による公道パレードを実施 目玉企画のひとつが、1996年以前に生産された日米欧の個人オーナー車約120台による「クラシックカーパレード」だ。 朝8時30分にトヨタ博物館(長久手市[…]
保守的なクルマ造りのイメージが強いトヨタだが、ときどき大胆な商品企画を世に送り出してきた トヨタ車にぶっ飛んだイメージを持つ人は、さほど多くはないだろう。最近では大変身を遂げたクラウンのようなモデルも[…]
4K-U型エンジン 大パワーはなくとも、運転の楽しさを教えてくれたFRコンパクトカー 最近では新型車の最高出力の数字が話題になることはめったにない。目の肥えた現代のクルマ好きには、最高出力はクルマの能[…]
DOHCにこだわり続けるイタリアの雄アルファロメオ アルファロメオ1900(1950年) アルファロメオ・ジュリエッタ(1954年) 複雑な構造や高い精度が求められるDOHC 手元にある富士重工業(現[…]
64年前に誕生した、英国製スポーツカーを思わせる美しいロードスター 1962年10月、日産自動車は「ダットサン・フェアレディ1500(SP310型)」を発売した。 その前年に開催された第8回全日本自動[…]
最新の関連記事(日産)
北米初のe-POWER投入で高評価! 「100%モーター駆動」がもたらす走りの魅力 「ワーズ 10ベストエンジン&推進システム」は、米国市場で販売されるパワートレインの中から、革新性、動力性能(パワー[…]
値引き情報の見方 ◎車両本体目標 車両本体価格からここまで取れれば成功という額。付属品からの値引きは含まない。 ◎リセール予想 次に買い替える時の下取り査定額。2~3年後の評価をA~Eの5段階で評価。[…]
値引き情報の見方 ◎車両本体目標 車両本体からの値引き目標額を示している。実際の値引き額は、販売店や購入時期、グレード、オプションなどによって変動する。 ◎リセール予想 購入したクルマを将来売却すると[…]
64年前に誕生した、英国製スポーツカーを思わせる美しいロードスター 1962年10月、日産自動車は「ダットサン・フェアレディ1500(SP310型)」を発売した。 その前年に開催された第8回全日本自動[…]
値引き情報の見方 ◎車両本体目標 車両本体からの値引き目標額を示している。実際の値引き額は、販売店や購入時期、グレード、オプションなどによって変動する。 ◎リセール予想 購入したクルマを将来売却すると[…]
人気記事ランキング(全体)
最新の投稿記事(全体)
一番人気はクラシックMINIを思わせる「インスパイアード・ホワイト」 昨年の「ジャパンモビリティショー2025」で世界初公開され話題を集めた同モデルは、電気自動車(BEV)だけでなく、高効率ガソリンエ[…]
RVパーク 近江舞子トーンズ(OMI-MAIKO TONES) 琵琶湖・内湖・比良山が織りなす雄大な絶景を楽しめるRVパーク 琵琶湖八景に数えられる景勝地・近江舞子にある「RVパーク 近江舞子トーンズ[…]
1位「200円で150km」「3人乗り」バイクのような見た目でクルマ級の個室感! 電動トライク「URBAN TRIKER」を販売するビークルファンが名古屋に新拠点オープン この記事で分かること ドア付[…]
2026年10月 ミニバン値引き相場ランキング 以下は、車両本体からの値引き目標額が大きい順に並べた一覧。付属品からの値引きは含めていない。※同額は同順位。受注停止中など、値引き目標額を設定できない車[…]
横浜キャンピングカーショーで披露された、キアの新型EV「PV5」がベースの「Alva P47UD」。BEV専用骨格による段差のない超低床フラットフロアと、71.2kWhの大容量バッテリーを活かし、サブ[…]
- 1
- 2
























