
日本の高度経済成長期を象徴する大衆車カローラは、単なるファミリーカーにとどまらず、走りの情熱を秘めたスポーツモデルへと進化を遂げた。その頂点に君臨するのが、1972年に誕生した初代カローラレビン(TE27型)である。軽量ボディに力強いエンジンを秘めた名車の歩みと、その真価を振り返る。
●文:月刊自家用車編集部
大衆車からスポーティクーペへ:カローラ派生モデルの歩み
日本全体が高度経済成長の波に乗り、マイカーの存在が人々の憧れから現実的な選択肢へと移り変わっていた1960年代後半。トヨタはファミリー層を狙ったコンパクトカーとして初代カローラを世に送り出した。クラスを超えた豪華さと優れた走りのバランスで瞬く間にベストセラーとなったカローラは、発売からわずか3年5か月で累計販売台数100万台という偉業を達成する。
1966年に発売された、トヨタの初代カローラ。
絶大な支持を得たカローラは、1970年5月に初のフルモデルチェンジを実施し、2代目(E20系)へと移行した。このモデルチェンジを機に、さらなる人気の拡大と若年層のユーザー獲得を目指して誕生したのが、スタイリッシュな2ドアボディを持つ「カローラクーペ」である。
当初、クーペのパワートレインにはセダン譲りの1,166cc直列4気筒OHV「3K型」エンジンが採用され、SUツインキャブレターで武装したスポーティモデル「1200SL」がフラッグシップを担っていた。しかしトヨタは、拡大する高速道路網やドライバーの走りのニーズに応えるべく、矢継ぎ早にラインナップを拡充していく。同年9月には新開発の1.4L「T型」OHVエンジンを搭載した「1400シリーズ」を追加投入。足回りには13インチタイヤと専用チューニングのサスペンションを採用し、走行性能を底上げした。
1972年の、トヨタ カローラクーペのカタログの表紙。総ベージ数は24ページだった。
さらに翌1971年4月には、このクラスでは初となる5速マニュアルトランスミッションと引き締められたハードサスペンションを組合わせた「1400SR」を設定する。95馬力を発揮する1.4Lツインキャブエンジンを搭載した1400SRの登場により、カローラクーペは単なるスタイリッシュなファミリーカーの派生にとどまらず、本格的なスポーツモデルとしての基盤を着々と固めていったのである。
圧倒的な動力性能:TE27型カローラレビンの誕生
1970年代初頭のモータースポーツ人気の高まりとスポーツモデル市場の過熱を受け、1972年3月、カローラクーペの真骨頂ともいえる最高峰モデル「カローラレビン(TE27型)」がベールを脱いだ。
カローラクーペの最上級モデルとなる、カローラレビン(TE27型)。
レビンの最大の特徴は、上位車種である「セリカ」や「カリーナ1600GT」に搭載されていた上位スペックのパワーユニット、1,588cc直列4気筒DOHC「2T-G型」エンジンをそのまま移植した点にある。最高出力115馬力を6,400rpmで発生させるこの名機は、軽量なコンパクトボディと組み合わされることで真価を発揮した。セダン派生型の引き締まった車体構造と、車両重量わずか855kgという徹底した軽量化により、最高速度190km/h、0-400m加速16.3秒という、当時の同クラスでは群を抜く俊足を実現したのである。
上位車種のパワーユニット「2T-G型」エンジンは115馬力を発生。なお、足回りも専用チューンされ、オプションでlsdも選択可能だった。
その圧倒的なパフォーマンスに相応しく、エクステリアおよびインテリアも徹底してスパルタンに仕立て上げられた。最大の外観上の特徴は、太いタイヤを収めるために前後輪へ装着されたリベット留めの専用オーバーフェンダーである。これは同時に登場した兄弟車「スプリンタートレノ」とともに強烈な存在感を放ち、公道を走るレーシングカーのような精悍なルックスを提示した。(なお、独立4灯のリアコンビネーションランプを採用したトレノに対し、レビンは独自のデザインで差別化が図られていた。)
トヨタ カローラ レビンのリアデザイン。ちなみに、兄弟車となるカローラ トレノのリヤコンビネーションランプは独立四灯で、レビンとの見分け方にもなっている。
インテリアに目を向けると、コクピットには大型の回転計を配置した本格的な6連メーターパネルが配置され、フロアから伸びる5速MTのシフトレバーがドライバーの胸を高鳴らせた。シートにはホールド性に優れたヘッドレスト一体型のエアホール入りセミバケットタイプを採用。足回りには専用チューンが施されたハードサスペンションが組まれ、高いトラクション性能を引き出すためのLSD(有限滑りダイヤル/差速機)がオプション設定されるなど、走りに妥協のない装備が満載されていた。
初代のカローラ レビンのインパネには6連式のメーターを採用し、よりスポーティな雰囲気を作っている。メーターの一番右側が回転計。5速MTはフロアチェンジ式となっている。
名車のスペックと時代を映す歴史
大衆車の枠を超えて日本のモータースポーツ界や走りの文化に大きな足跡を残した初代カローラレビン(TE27型)。その詳細なスペックと、初代カローラクーペが辿った時代の変遷は以下の通りである。
カタログに掲載されていた、カローラ クーペの諸元表。
【主要諸元(1972年式 カローラレビン・TE27型)】
- ボディサイズ: 全長 3,955mm × 全幅 1,595mm × 全高 1,335mm
- ホイールベース: 2,335mm
- 車両重量: 855kg
- エンジン形式: 2T-G型 水冷直列4気筒DOHC 1,588cc
- 最高出力: 115PS / 6,400rpm
- 最大トルク: 14.5kg・m / 5,200rpm
- トランスミッション: 5速MT
- 最小回転半径: 4.8m
- タイヤサイズ: 175/70HR13
- 乗車定員: 5名
- 新車時価格: 81万3,000円(東京地区・1972年当時)
【初代カローラクーペ/レビンの歴史的変遷】
- 1970年(昭和45年)5月: 2代目カローラ(E20系)へのフルモデルチェンジに伴い、初代「カローラクーペ」がデビュー。同年9月には1.4LのT型エンジンを載せた1400シリーズを追加。
- 1971年(昭和46年)4月: マイナーチェンジを実施。クラス初の5速MTを採用したスポーティグレード「1400SR」を設定。
- 1972年(昭和47年)3月: 2T-G型DOHCエンジンとオーバーフェンダーを装備した最高峰モデル「カローラレビン(TE27)」を追加。
- 1974年(昭和49年)4月: 3代目(E30系)カローラへフルモデルチェンジ。クーペおよびレビンの血統は次世代へと引き継がれる。
- 1977年(昭和52年): 初代から始まるE20系クーペモデルの生産・販売が終了。
大衆車カローラの俊敏な軽量ボディにGTクラスのハイパワーエンジンを詰め込むという「ライトウェイトスポーツ」の黄金方程式を確立したTE27型レビン。そのスパルタンな思想と走行性能は、半世紀が経過した現在もなお、多くの自動車ファンや旧車愛好家の間で伝説として語り継がれている。
初代カローラクーペの写真ギャラリー
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