
待望の復活を果たした5代目パジェロ。外から見ると大柄なボディですが、いざ走り出すと驚くほどキュッと手になじむ一体感があることに驚いてしまうほど。ここでは雨のサーキット試乗から難関モーグル路まで、ラリー経験が抱負な竹岡圭さんが独自の視点でその走りと進化ぶりをお届けします。
●文:竹岡圭 ●写真:奥隅圭之
見晴らし抜群で小回りも!乗れば大きさを忘れる一体感
5代目パジェロはトライトンをベースとした、ラダーフレーム構造を採用して登場しました。悪路走破性が高いと言われる構造なので、この名前を聞くだけで砂漠を彷彿とさせる、パジェロにはピッタリな構造なのかもしれません。
ベースとなったトライトンから260mmショートホイールベース化し、合わせて全長も440mm短縮。全幅は5mmしか変わらないものの、トレッドはフロント60mm、リヤ65mm拡大され、グッと安定感が増しているのが数値からもわかります。
全高は95mm高くなっているので、前から見るとトライトンを見慣れている私でも、ずいぶんと大きなクルマに見えますが、横に回ると私からすればかなり短く感じられました。まぁ、試乗会場で短いと言ったのは私だけらしいので、歴代モデルから比べると、大型化が気になる方も多いかもしれません。
トライトンをベースとしつつ全長を440mm、ホイールベースを260mm短縮。全高は95mm高くなり、トレッドは前60mm・後65mm拡大された。オフローダーらしい堂々たる佇まいと、取り回しの良さを両立した絶妙なディメンションが光る。
しかし、乗ってしまえばこのボディサイズは、まったく気にならないんですよね。いい意味で大きさを感じさせないんです。ヒップポイントもトライトンより高い上に、視野角81.7度と見晴らしもよく、見えているからこその手の内感覚と、全体的な車両の一体感が相乗効果となっているのだと思います。
さらに小回り性の高さも、それを後押ししてくれています。最小回転半径は5.8mと、数値的にも小さいのですが、実際はもっと小回りできている気がするくらい取り回しがいいんです。今回用意されていた簡易的なオフロード体験コースの狭いモーグル路面でも、ここにタイヤを持っていきたいという位置に、スッと一発でタイヤを乗せられるくらい感覚は掴みやすかったです。
ちなみに、パジェロよりも全長の長いトライトンに、幅広タイヤを履かせたラリーカーで、狭いラリーコースはもちろん、狭いビジネスホテルの駐車場でも、一度も困ったことのない私が言うのだから、この証言は信用に値すると思います(笑)。
サーキットでの試乗はあいにくのウェット路でしたが、そんな悪条件もどこ吹く風。重くなった車体をものともせず、8速ATと新エンジンで力強く加速するさまは絶大な安心感を感じさせてくれる。
狭いモーグルでも「ここにタイヤを落としたい!」と思ったポイントへ一発で持っていける取り回しの良さが光る。タイヤが宙に浮いて空転するような場面でも、「4LLc」のロックモードに入れた瞬間、何事もなかったかのようにスルスル脱出できるのは、リアルワールドでも頼りにできそう。
重さの不安はすぐに解消、雨のサーキットでS-AWCがいい味を出している
じつは今回試乗するまで、私がいちばん気になっていたのはパワースペックでした。トライトンと比べると、車両重量が約340kgほど重くなるからです。パワートレーンは同じ型式の2.4Lディーゼルエンジンでも、「実はジェネレーション2へと進化している」「トランスミッションも6速から8速ATへと多段化されている」と聞いてはいても、正直なところ心配していたんですよね。
ところが、どっこい。今回はサーキットでの試乗ではありましたが、その懸念ほぼ払拭されました。あいにくウェットコンディションではありましたが、S-AWCを手に入れた5代目パジェロは、力強く発進した後、コーナーも安定感を保ったままクリア。正直ストレートではもう少しパワーが欲しいと思うシーンもありましたが、それはチューニングが施されたラリーカーと比べてしまうからであって、元来そういったクルマでもありませんし、十分すぎるほど力強い頼もしさが感じられました。
というか、ついついラリーカーと比べてしまうほど、よく走ってくれたというのが正解。加えて、重くなったボディをしっかりと減速させるブレーキ性能も、なんら問題はありませんでした。
走行モードもさまざま試してみました。コースにかなり水が溜まったヘビーウェット路面では、結論的に4Hのグラベルモードが適していましたが、センターデフをロックする4HLcのマッドモードでも、やや曲がりにくくはなるものの、逆に直線の安定性はグッと腰を落とした感じでかなり向上しました。
実はこの4Hという、センターデフをロックしない4WDモードがあるというのが、三菱のスーパーセレクト4WDの特筆事項なんです。4HだとAYCも働きますから、より気持ちよく曲がりやすくなるんですよね。
また、今回7名乗車とすることで、前後重量配分も52:48となり、後ろが単なる荷台のトライトンと比べると、バランスも相当よくなっています。3列目シート自体はコンパクトですけれど、運動性能にはしっかり寄与してくれているんですよね。
運転席に座ってまず驚くのがこの見晴らしの良さ。ヒップポイントが高く視野角も81.7度と広いので、ボディの四隅がしっかり把握できることが印象的。
走行状況に応じて最適なトラクションを引き出す走行モードセレクター。舗装路の高速巡航から泥道、岩場までカバーする多彩なモードを備える。先進の電子制御システムが、路面変化に対して瞬時に最適な四輪駆動配分を行い走行をアシストする。
モーグルも45度の急坂も難なくクリア!想像を超える走破性を実感
さて、本格的オフローダーということで、ディメンションもしっかり確保されています。
最低地上高は230mm、アプローチアングル30.4度、ランプブレークオーバーアングル22.6度、デパーチャーアングル25.8度というスペックで、深いモーグルも難なく超えられますし、タイヤが浮いても滑っても、7つのドライブモードとスーパーセレクト4WDを組み合わせれば、いとも簡単に抜け出せるという実験もさせていただきました。
ノーマル状態だとタイヤが空転してしまうところも、4LLcのロックモードに入れれば、本当に瞬時に抜け出せてしまうんですよね。もしもさらに緊急事態に陥った場合は、グレードによってはリヤデフロックというスイッチも用意されています。まぁそんな事態は、AXCRに参戦でもしない限り出くわさないような気もしますけれど…。
さらに、あの有名な45度の坂を上るキットカーも体験させていただきました。空しか見えない急坂をグイグイと上っていくのはもちろん、実は後退するときも後ろ向きのヒルディセントコントロールが効くので安心感が高いんですよね。
そんなわけで、怖いものナシなのは重々体感としても知ってはいましたが、今回のパジェロはその想像をちょっと超えてきました。一般道や本物のオフロードで走れる日が待ち遠しいです。
三菱おなじみの45度登坂キットでのデモンストレーション。グイグイ登るパワフルさはもちろんですが、実は感動したのがバックするとき。後ろ向きでもヒルディセントコントロールがしっかり利いて車速を抑えてくれるので、恐怖感ゼロで安心して下りてこられました。
新型パジェロの前でラリーアートの増岡浩総監督と記念撮影。ラリーのDNAを受け継ぐ新型パジェロの仕上がりには増岡さんも太鼓判!
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