
必要な時にだけ”共用”のクルマを利用する、カーシェアリング。月額や使用時の料金、一部はガソリン代(洗車代)が実費でかかるものの、保険や車検といったクルマを維持する上で避けてとおれない”維持費”を考えなくて済むことが多い(プランによっても異なる)。公共交通機関が発達し、駐車場の料金が高額になりがちな都市部に暮らす人にとってカーシェアリングは、とくに便利なサービスといえる。しかし、たとえば自家用車所有から切り替える場合などで、”デメリット”といえるようなポイントはないのだろうか。
●文:松村 透/月刊自家用車編集部
1:不特定多数の人が使うがゆえ車内が汚れている場合も
「クルマをシェアする」というサービスの性格上、不特定多数の人が利用する。当然ながら扱い方も人それぞれだ。自身でクルマを所有したことがある人ならば、借りもののクルマに対してこれ以上はまずいという”NGライン”が想像できるだろう。
しかし当然、中にはモノの扱いが雑な人もいる。身銭を切ってクルマを所有したことがない人であれば、なおさらかも?! 車内で飲食した際の食べかす、フロアマットについた泥汚れ、べとつくステアリング…。
潔癖性の人はまず耐えられないだろう。「普段は気にしないという人でさえ、我慢が必要ではないか」と思うようなレベルに出会ったことも。
車内外の清掃に何らかのインセンティブ(30分無料になるなど)を設けている場合も。
2:「返却時間が気になる」という見えないストレス
レンタカー同様、借りものである以上は返却しなければならない。図書館の本でも、(最近はめっきり減ったが) DVDレンタルやCDレンタルでもそう。
ついうっかり返却日を忘れ、数日が経過。仕方なく延滞料金を払ったという経験がある人もいるだろう。これが人気作であった場合、返却されるのを「いまかいまか」と首を長くして待っている人がいることも。
カーシェアリングの場合、アプリなどで返却時間の変更を行い、延滞料金を払えば済むケースも。しかし、返却時間の変更を忘れたままでいるとペナルティを課されることが多いので、注意が必要だ。
いずれにしても、借りた瞬間から気にしなければならないのは「返却する時間」。これが意外とストレスだという人は、少なくない。
旅行で帰りるレンタカーと違い、日常使いで利用すると「スーパーとクリーニングに寄って…あ、薬局もだった!」なんて目的地が増えるケースも。
3:貴重品など、忘れ物をしたら一大事
クルマを無事に返却したものの、後になって忘れ物に気付いた! (こういってはナンだが)たとえばビニール傘など、ある程度諦めがつくものであればまだいい。
しかし、貴重品であった場合はそれこそ一大事だ。財布が入った鞄、スマートフォン、自宅の鍵、ETCカード、仕事の資料などなど…。
もし次の人が乗り始めてしまったら、クレジットカードの紛失連絡をして所定の手続きを行うなど、早急に対処することが山のように出てくる。
この時ばかりはきっと「これが自分のクルマだったら…」と思うはずだ。
「返却後も1度だけドアの開閉が可能」などのシステムを採用しているケースも。次の利用者の借り出し開始まで、時間があればいいのだが……。
4:カーシェアリングで運転できるクルマは限られる
カーシェアリングで使われるクルマは基本的にコンパクトカークラスであることが多い。また、多くの場合は最新モデルが用意されるので、故障に遭遇することもほぼないだろう。
いずれにしても、実用タイプになることが多いので、たとえばスポーツモデルやオープンカーといった趣味性の高いクルマに乗りたい場合は、レンタカーとなる。
当たり前だが、この種のクルマは基本的に割高だ。毎月のように借りて乗るには出費が大きくなってしまう。
「足として使うから車種はなんでもいい」という人は別にして、何かしらのこだわりがある場合、カーシェアリングやレンタカーでその欲求を満たすのは当然困難であることが多い。
場所などは限られるが、スポーツカーをカーシェアリング車両として用意しているシェア会社もある。
5:道具としてのクルマしか知ることができない?!
これは完全にクルマ好き(筆者)の目線なので批判もあるだろうが、カーシェアリングを利用するだけでは「道具としての便利さ」という視点でしかクルマの魅力を知ることができないかもしれない。
身銭を切ってクルマを所有・維持するとなると、何かと出費がかさむ。文字どおりの”金食い虫”だ。しかし、自分の意思で選んだ”愛車”は、それを補ってあまりある魅力を持つことも事実。
ふと思い立って、好きなときに好きなだけ、返却時間を気にすることなくあてのないドライブを楽しむことができる。
自分の好きな音楽をかけながらドライブすることで気持ちがリフレッシュ、考えがまとまることもあるだろう。また、自分好みに愛車をカスタマイズしてもいい。そのうち同じ趣味を持つ仲間と出会いだってあるかもしれない。
どれも、カーシェアリングを利用するだけでは得られない体験であることは確かだ。
「一度だけでも、クルマを所有する喜びを!」と思ってしまうのは筆者がクルマ好きだからかもしれないが……。
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