
東京オートサロン2025でコンセプトが披露され、今年4月の発売がアナウンスされた進化型GRヤリス。モータースポーツからの知見をフィードバックし、細部にわたるまで性能を追求することで、25式と呼ばれる最新モデルの実力はどこまで高まったのだろうか?
●文:竹岡圭 ●写真:澤田和久
剛性の積み重ねが生む一体感
2024年に実施されたゲームチェンジャーとまで言われた20式から24式への進化。その革新的な変化と比べると、24式から25式への進化は「ブラッシュアップ」と表現するのが妥当だろう。しかし、実際にステアリングを握ってみると、その言葉の裏に秘められた緻密な進化に舌を巻かざるを得ない。やはりGRの仕事は違うと、心底唸らされてしまった。
24式で徹底的に強化されたボディ。その強固な土台を最大限に活かすため、25式では締結剛性を高める特別なボルトを採用することで、さらなる強化が図られている。つまり、締め付けトルクの違いだけでも、かなりの差が出るというから驚きだ。
この締結剛性の向上に合わせて、ショックアブソーバーは再チューニング。微低速域では減衰力をアップして、ステアリングを切った瞬間の手応えとグリップ感を向上させた一方で、中高速域では逆に減衰力をダウンさせ、路面への接地性と乗り心地を改善している。
サーキットでの試乗だったため一般道での乗り心地は判断できないが、確実に接地性が向上しているのは確かだ。ステアリングを介して路面の情報がよりリニアに伝わり、まるで手足のようにクルマを操る感覚が増した。これによりライントレース性が向上し、結果としてコーナリングスピード全体が底上げされている。
最新の25式GRヤリスは、モータースポーツの知見を徹底的に反映した進化型モデル。
最新GR-DATは、ドライバーの思考を先読みするかのような制御
またGA-DATの進化ぶりも印象的。制御ソフトが変更されただけというが、その変化は顕著。Dレンジでの変速制御はさらに細かく、よりドライバーの意思に寄り添うようにチューニングされている。
例えば、登坂勾配ではシフトアップのタイミングを遅らせて高出力を維持するし、ウェット路面などではドライバーがブレーキを踏み切る前に積極的にシフトダウンする。さらに、横Gが大きくかかるようなコーナリング中には、あえて変速速度を落としてシフトショックを抑えるなど、極めて細やかな配慮がなされているようだ。
GR-DATモデルは、モータースポーツの知見を活かした変則制御が印象的。ドライバーの意図を先読みし、ブレーキやアクセル操作に応じて最適なギアを選択するスムーズかつダイレクトな変速フィールは、まるでプロドライバーがシフト操作しているかのような感覚を覚えるほど。
ほかにもDレンジのままパドルシフトで変速できる回転数範囲が広がり、MTモードではレブリミッターに当たっても3秒間ギアをキープできるようになっている。これまではわずか0.4秒しかキープできなかったため、「ここでシフトアップしたくない」と思うシーンもあったのだが、25式は全体的に「もっと思い通りに操りたい」というドライバーの欲求に応えてくれる印象を強く受ける。
GR-DATは、2024年発表モデルで初登場した8速オートマチックトランスミッション。今回の改良では、スポーツ走行時のギヤ選択制御に細かな調整が加えられ、ドライバーの操作に対する応答性をさらに高められている。
走りのための空間を意識させる、ドライバーを中心に配置された操作パネルが特徴。フルデジタルメーターや大型のセンターディスプレイにより視認性と操作性を両立するほか、スポーツペダルやステアリングにもGRのロゴが配される。
「エアロパフォーマンスパッケージ」は、確実にタイムを削ってくれる
6点のエアロパーツからなる「エアロパフォーマンスパッケージ」は、今回の改良の目玉アイテム。当初、フロントリップスポイラーは計画になかったが、リヤウイングが想像をはるかに超える絶大なダウンフォースを発揮したため、フロントに少々「抜け感」が出ることが判明。そのバランスを整えるため、最後にフロントリップスポイラーの採用が決定したとのこと。
これにより旋回速度は明らかに上がったそうで、富士スピードウェイで1秒ものタイム差がつくという。実際、このパッケージを装着した車両は、最も安定して乗りやすく、誰でもタイムが出しやすい仕様に仕上がっていた。
「エアロパフォーマンスパッケージ」は、ダクト付きアルミフードやフロントリップスポイラー、可変式リアウイングなど、計6アイテムから構成されるパッケージ。スーパー耐久シリーズや全日本ラリー選手権の現場で得られた知見を基に、冷却性能と空力性能を最大限に高めるために開発されている。
エアロパフォーマンスパッケージ装着車の走りはさらに一変。リヤウイングが絶大なダウンフォースを生み出し、高速コーナーでの安定感が飛躍的に向上。フロントリップスポイラーやフェンダーダクトの効果もあって、クルマ全体の空力バランスが大きく高まる。旋回性やコーナリング性能の違いは明らかだ。
進化の恩恵は、既存ユーザーにも。この配慮は嬉しい
ここまで25式が進化していると、「24式を買ってしまった人は…」と思ってしまうが、GRはこの素晴らしい進化の恩恵を、現行オーナーも受けられるように配慮してくれる。
24式はもちろん、それ以前のモデルにも対応できるように、制御ソフトの書き換えはもちろん、ボルトワッシャーセット(台座を付ければ20式もOK)や、エアロパーツ類も追加で販売できるよう、現在認証申請中だという。
見た目以上に中身が深く進化した25式だが、その進化の恩恵は、現行オーナーにも届けられる。これは嬉しい配慮だと思う。
竹岡 圭(たけおか けい)
自動車専門誌から女性誌まで幅広く執筆するモータージャーナリスト。国際C級ライセンスを持ち、自らもモータースポーツに参加。女性視点でカーライフ全般をレポートし、快適なクルマ遊びを提案している。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(トヨタ)
初代カローラのプラスαのポイントは、「スポーティ」 カローラを開発した長谷川龍雄主査が、「80点プラスα主義」を標榜したことはよく知られている。すべてが100点満点のクルマを作ることはできない。だから[…]
モデル概要 1997年の初代モデルの発売以来、高級クロスオーバーSUVのパイオニアとして圧倒的な人気を博してきたハリアー。2020年にデビューした現行型は、歴代モデルのイメージを受け継いだ流麗なクーペ[…]
造形家出身主査の美学が生んだ「真の大人向けクーペ」 一般的には質実剛健なイメージで語られがちなトヨタだが、その本質は前人未到の領域へ果敢に足を踏み入れてきたチャレンジャーである。豊田喜一郎が自動車事業[…]
高い信頼性を誇る王道の国産バンをベース車両に採用 キャンピングカーとしての使い勝手と長距離ドライブでの優れた耐久性を両立させるために、ベース車両選びは極めて重要である。多くのユーザーから絶大な支持を集[…]
2代目クラウンは、高級車たる不動の地位の礎を築き上げた記念碑的なモデルであった 日本の自動車史において、高級車というカテゴリーを確固たるものにし、現代に至るまで脈々と受け継がれる「クラウンならではの風[…]
最新の関連記事(ニュース)
伝統の「ASX」と名車「VR」のDNAを融合した新型BEV 三菱自動車は、オーストラリアおよびニュージーランドにおいて、鴻海精密工業(Foxconn)グループ傘下の鴻華先進科技(Foxtron)からO[…]
16歳以上なら免許不要! 4輪+外装ボディで公道を走れる Blue Jayは、道路交通法上の「特定小型原動機付自転車」の規格に対応しており、16歳以上なら運転免許が不要で、公道を走行できる。もちろん、[…]
過酷なダカール・ラリーで鍛え上げられた競技車「D7X-R」を公道仕様に昇華させた限定モデル 「ディフェンダー ダカール」のベースとなるのは、2026年のダカール・ラリー「ストッククラス」に初参戦し、1[…]
消えるライトにバタフライドアなど、新機軸を採用する次世代コンセプト 今年ブランド創立40周年を迎えたAcuraが提案するこのモデルは、普遍的な美しさと先進技術を融合させた新デザイン言語の象徴として誕生[…]
マツダのモータースポーツ史を支えてきたゆかりの地 「MAZDA HERITAGE SPACE FUKAGAWA」が開設された関東マツダ深川店は、ミスター ル・マンこと寺田陽次郎氏が1970年代にレース[…]
人気記事ランキング(全体)
群雄割拠の時代——軽スポーツの限界に挑んだ3社の競演 スズキ・カプチーノが産声を上げた1991年は、潤沢な資金力を背景に自動車メーカー各社が世界トップレベルの車両開発へ没頭していた、まさに自動車産業に[…]
16歳以上なら免許不要! 4輪+外装ボディで公道を走れる Blue Jayは、道路交通法上の「特定小型原動機付自転車」の規格に対応しており、16歳以上なら運転免許が不要で、公道を走行できる。もちろん、[…]
造形家出身主査の美学が生んだ「真の大人向けクーペ」 一般的には質実剛健なイメージで語られがちなトヨタだが、その本質は前人未到の領域へ果敢に足を踏み入れてきたチャレンジャーである。豊田喜一郎が自動車事業[…]
「風速」ではなく「風の太さ」にこだわったブロワー FUBUKIの大きな特徴は、一般的なハンディブロワーとは異なる「太い風」を生み出す設計だ。 ブロワーでは最大風速の数値をアピールする製品も多いが、FU[…]
ゲリラ豪雨の危険から視界を守る「C108 エクスクリア カメラコーティング」 夏場に多発するゲリラ豪雨では、車周囲の安全確認が通常以上に困難となる。特にリアカメラやサイドカメラのレンズに水滴が付着する[…]
最新の投稿記事(全体)
2年乗ったのに「残価率114.8%」! 愛車買取オークション「セルカ」を運営するクイック・ネットワークの調査によると、セルカに出品された2024年式ランドクルーザー300のうち、最上級グレードの「ZX[…]
伝統の「ASX」と名車「VR」のDNAを融合した新型BEV 三菱自動車は、オーストラリアおよびニュージーランドにおいて、鴻海精密工業(Foxconn)グループ傘下の鴻華先進科技(Foxtron)からO[…]
ライバルであるフェラーリを性能で凌駕した“奇跡のモデル” ランボルギーニ・ミウラはスーパーカー世代でなくとも、クルマ好きなら誰もが憧れる名車中の名車かと。 1966年にP400(ちなみに、PはPost[…]
低年式はリアウィンドーが大きな特徴となる ビートルは1967年式までが「低年式」、1968年式以降が「高年式」とざっくり大分類した。さらに細かく分類するにあたり、いちばん目立つ部分がリアウィンドーだ。[…]
千葉豪雨でも発生した「車内閉じ込め」 冠水した道路は一気に危険な場所に 大雨による道路冠水は、短時間で状況が変化します。走行中は「これくらいなら通れそう」と思っていた道路でも、雨が降り続けることで水位[…]
- 1
- 2



























