
東京オートサロン2026において、ダイハツが提示した「K-OPEN ランニングプロト2」は、単なるコンセプトカーの枠を超え、軽自動車という日本独自の規格における「走りの本質」を問う意欲作だ。実走を前提とした「ランニングプロト」の名が冠されたこのモデルには、どのような技術的知見と情熱が込められているのだろうか?
●文&写真:月刊自家用車編集部
機能性を煮詰めた新スタディモデルとして披露
現代の自動車産業は、電動化や自動運転といったCASE(Connected, Autonomous, Shared & Services, Electric)の波に飲み込まれ、効率性と環境性能の追求が至上命題となっている。しかし、その潮流の中で、我々クルマ好きが本能的に求める「操る愉しみ」という根源的な欲求は、時に置き去りにされがちだ。
ダイハツが東京オートサロン2026で披露した「K-OPEN ランニングプロト2」は、まさにその停滞した空気に一石を投じる、一筋の光明といえるだろう。
このモデルは、かつてのコペンが築き上げた軽量オープンスポーツのDNAを継承しつつ、次世代の技術的知見を投入して再構築された「走るための実験体」だ。
そして特筆すべきは、単なるデザインスタディにとどまらず、「ランニングプロト」という名称が示す通り、動的な走行性能を突き詰めるための実戦的なアプローチが注がれていることだ。
「K-OPEN ランニングプロト2」は、レイアウトやパーツの改良により、2か月前のジャパンモビリティショーで披露された「K-OPEN ランニングプロト」から進化。モータースポーツを意識した先行スタディ車というコンセプトをより強めた格好だ。
オートサロンで公開された「K-OPEN ランニングプロト2」を観察すると、設計面の進化のスピードに驚かされる。
ルーフやバックパネルを取り払った姿で公開したのは、開発陣が目指す「軽量化」「低重心化」「最適な重量配分」のアプローチを存分に見て欲しいからとのこと。
フロントマスクからサイドに流れるラインは、気流を整流するだけでなく、ブレーキシステムの冷却効率を最大化するよう設計され、その造形は「機能が形を決める」という工業デザインの鉄則を体現。装飾を削ぎ落とし、純粋に速さと効率を求めた結果として現れたそのシルエットは機能美の極致であり、見る者に理知的な感動を与え、コペンを大ヒットへと導いた。
そのコンセプトは、次期シリーズとなるK-OPENにも引き継がれ、さらに洗練されていくことは明らかだ。
オートサロンで公開されたランニングプロト2は、ジャパンモビリティショー2025で発表され話題を集めた「K-OPEN ランニングプロト」よりも、軽量化とボディ剛性の向上を煮詰めたスタディモデルに仕上がっていた。
ジャパンモビリティショーに展示されていた「K-OPEN ランニングプロト」。軽自動車という限られた寸法制約の中で、いかにして空気抵抗を低減し、同時にダウンフォースを確保するか。この難題をダイハツのエンジニアリングチームは、コペンを誕生させたときから極めて論理的に突き詰め実現してきたという。
ジャパンモビリティショーでは、ランニングプロトではない「K-OPEN」も披露。美しいシルエットを来場者に見せつけ、現行コペンの後継モデルを開発していることをアピールした。
動的質感を貪欲に追求する、大胆な変更。2か月でサスも配置も別物に
今回のランニングプロト2で注目して欲しいのは、本来であれば開発変更に時間がかかるはずの内部メカニズムが、大きな変化をしていたことだ。具体的には、シャシー構造とパワートレーンの統合管理が進み、ボディ剛性の向上と徹底した軽量化がさらに強化されている。
一般的にオープンモデルは、屋根という構造材を失うことで剛性の確保が困難になるが、K-OPEN ランニングプロト2では、ロールケージでキャビンを囲むことでクローズドボディに匹敵する捩じり剛性の実現が図られている。
さらに搭載される3気筒ターボエンジンは、より低く、奥に配置され、より理想的な重量バランスを追求。この変更によりフロントミッドシップとしての純度も深化したという。
ほかにもリヤサスは、ランニングプロトの車軸式から、より柔軟に動いてくれるストラット式に変更。これにより路面追従性の強化が図れるとも。
バネ下重量の軽減を意識したサスペンションジオメトリの変更により、路面からのフィードバックをよりダイレクトにドライバーへと伝え、人馬一体の感覚を研ぎ澄ませることに寄与していくことが想像できる。
ランニングプロトでは67度に傾けられていたエンジンは、40度の角度に変更。触媒とターボの位置を適正化するとともに、搭載位置を前輪より後方としたフロントミッドシップとしている。軽自動車規格のFRオープンスポーツカーといえどもサーキット走行にも耐えうる施策が採られている。
軽規格という「制約」が生む、創造的イノベーションが見どころ
日本独自の「軽自動車」という枠組みは、しばしばグローバル市場における制約と見なされがちだが、歴史を振り返れば限定された条件下でのみ生まれるブレイクスルーが数多く存在する。K-OPEN ランニングプロト2は、まさにその制約をバネにした創造的イノベーションを確認することができる。
排気量やボディサイズに上限があるからこそ、エンジニアは1gの軽量化、1%の効率向上に心血を注ぐ。
このミクロな改善の積み重ねが、マクロな視点での「卓越した運動性能」へと昇華されるプロセスは、クルマ好きのツボにグッと刺さる。
大排気量のスポーツカーが力任せに速度をねじ伏せるのに対し、K-OPENは知性と技術によって物理法則を味方につけようとしている。そのアプローチは、極めて理性的であり、知的好奇心を刺激してやまない。
モータスポーツを意識したハーネスとバケットシートを採用し、安全性はもちろんドライバーを強固にシートへ縛り付けることによりハードなドライビングをアシスト。トランクを露出させて軽量化も徹底。トランク左右のサスはストラット式に変更されている。
未来の軽オープンが、よりくっきりと見えてきた
「K-OPEN ランニングプロト2」が我々に示したのは、未来のスポーツカーは必ずしも巨大で高価なものである必要はないという、ひとつの強いメッセージだろう。電動化の足音が迫る現代において、内燃機関(あるいはカーボンニュートラル燃料)を用いた軽量スポーツの可能性を追求し続けるダイハツの姿勢は、文化的な多様性を維持する観点からも高く評価されるべきだ。
このプロトタイプが今後、市販モデルへとどのように昇華されていくのか、あるいは次世代の技術基盤としてどう活用されるのか、それはまだ未知数ではあるが、少なくとも本作に込められた「走る歓びを誰にでも手の届くものにする」という意志は、普遍的な価値を持っている。
「たった2か月でここまで…」という想いもあって、ダイハツスタッフにK-OPENの市販時期を尋ねてみたが、「まだまだ時間がかかります」との回答。その話しぶりからして、新コペンの登場は軽く2~3年はかかりそう。
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