
イタリア・サンターガタで産声を上げた「ウルスSEペルフォルマンテ」は、プラグインハイブリッド(PHEV)という電動化の潮流に対する、ランボルギーニからの極めて過激な回答だ。システム出力812CV、最高速312km/hという数字は氷山の一角に過ぎない。本モデルの真価は、緻密な質量管理、電脳化されたダイナミクス、そして官能的なサウンドの調和にある。SUVの限界を書き換える、その技術的内幕を紐解く。
●文:月刊自家用車編集部 ●写真:Automobili Lamborghini S.p.A.
電動化という「軛」を「武器」に変えた、サンターガタの思想
現代の自動車開発において、電動化は避けて通れない至上命題である。しかし、バッテリーの搭載に伴う「重量増」は動的パフォーマンスにとって大きな壁だ。ランボルギーニはこの二律背反に対し、妥協なき工学的アプローチで挑んだ。
それが、新型「ウルスSEペルフォルマンテ」である。心臓部に据えられた4.0リッターV8ツインターボエンジンはクランクシャフト上流に位置する永久磁石同期モーターと完璧な同調を果たし、ランボルギーニお得意のカーボンパーツの多用とチタン製エキゾーストシステムを用いるなど、ウルスSEより32kgの軽量化を達成した。
ウルスSEペルフォルマンテが搭載するPHEVはシステム総合出力812CV(596kW)、最大トルク1000Nmを叩き出す。SUVでありながら0-100km/h加速を3.3秒で駆け抜けるこのモンスターは、60km以上のEV走行モードという日常性を確保しつつ、ひとたびスロットルを開けば、物理限界を置き去りにして狂暴なダイナミズムを解放する、真のスーパーカーなのだ。
ランボルギーニのSUV・ウルスの最新作「ウルスSEペルフォルマンテ」がデビュー。重量が嵩むはずのPHEVシステムを搭載しつつ各部に徹底的な軽量化を施すことで、ジャンルを超えたスーパーカーに仕上がっている。
空力流体力学:美の背後に隠された、徹底的な機能主義
デザインディレクターのミティア・ボルケルトが語る「アドレナリンに形を与える」という言葉はこのクルマの造形を正しく表現したもので、流体力学的な必要性から削り出された機能そのものを指している。
顕著な例が、フロントフードに穿たれた巨大な「S-Duct(Sダクト)」だ。このインテークは空気を整流し、フロントの浮き上がりを抑制すると同時に、制動系の冷却効率を8%向上させるという多面的な実利を持つ。
さらに、航空工学やモータースポーツの知見をフィードバックした新設計のカーボン製リアスポイラーと大型ディフューザーが連携。結果として、ドラッグ(空気抵抗)をウルスSE比で3%削減しながら、車両全体のダウンフォースを23%も引き上げるという、驚異的な空力特性の最適化を達成している。
背が高いSUVスタイルは空力的に不利だが、フロントボンネットのSダクトや新形状のリアスポイラー、大型ディフューザーなどで煮詰められたエアロダイナミクスは、ウルスSE比で空力抵抗を8%削減、ダウンフォースは23%アップしている。
質量管理の数式:パワーウェイトレシオ「3.0」の衝撃
自動車における運動性能の指標として最も重視されるのが重量対出力比(パワーウェイトレシオ)だろう。ウルスSEペルフォルマンテは、構造部品の一体化と徹底した材料置換により車両重量2473kgまで減量した。
エンジンフード、ルーフ、ホイールアーチ、サイドスカートに及ぶ広範なカーボンファイバーパーツの採用に加え、アクラポビッチと共同開発したチタン製エキゾーストシステムを標準化することで、排気系だけで10kg以上を削ぎ落としている。
この結果、カテゴリーの絶対的指標となる「3.0 kg/CV」をマーク。質量がもたらす慣性モーメントの呪縛から解き放たれたことで、巨体を感じさせない俊敏な回頭性と、路面に吸い付くようなスタビリティを手に入れている。
カーボンパーツはあえて未塗装で演出。Y字型スポークデザインを採用した新しい23インチホイールはパフォーマンス重視のキャラクターを強調し、再設計されたホイールアーチにはカーボンファイバーのディテールを組み込む。
電脳の管制塔:6DセンサーとIPBがもたらす予測制御のパラダイムシフト
さらなるドラスティックな進化はデジタル制御の領域にある。2025年のモントレー・カー・ウィークで物議を醸したワンオフモデル「フェノメノ」から受け継がれた「6D(6自由度)センサー」の採用がそれだ。
車両重心に配置されたこのセンサーは、3軸の加速度とピッチ・ロール・ヨーの角速度をリアルタイムで測定。従来システムのような挙動乱れに対する「事後処理(フィードバック)」ではなく、タイヤのグリップや車体姿勢を先読みする「事前予測(フィードフォワード)」を現実のものにする革新的なシステムだ。
また、インテグレーテッド・パワー・ブレーキ(IPB)との協調により、各キャリパーの制動トルクはミリ秒単位でフルードのように滑らかに制御される。結果、200-0km/hの制動距離は130m未満に短縮され、システム応答性は12%向上。ドライバーは、物理の限界領域においても絶対的な安心感を得ることができるだろう。
車両全体に配置された8つの加速度計(各ホイールに1つずつ、シャーシの各コーナーに1つずつ)により、IPBシステムはタイヤの縦方向および横方向のグリップを継続的に分析し、同時に車体のロール挙動をリアルタイムで監視する。
シャシーの二面性:AURAシステムが描く、剛性と柔軟性の高次元融合
垂直方向の運動力学を支配するのは、新開発の「AURAシステム(2K2Vデュアルチャンバーエアサスペンション)」だ。「2K(2チャンバー)」「2V(2バルブ)」の構造は、車体挙動の「二面性」を完璧に担保する。
サーキット走行などの高負荷域ではプライマリーチャンバーが主導権を握り、コーナリング時のロール傾斜は55%も劇的に抑制。一転して、快適性を求めるクルージング時には、セカンドチャンバーへのバルブが開放され、空気容量の増大によって路面の不整をいなす(NVHは25%低減)。
さらにトレッドを16mm拡幅したアドバンテージも加わり、ステアリングレスポンスはどこまでもソリッドだ。魔法の絨毯のような乗り心地と、レーシングカーの如き強靭な足まわりが、電子のタクトによって完璧に調和している。
2K2Vシステムの統合により、スポーティな走行時のロール勾配が55%低減され、同時に快適性に関わる振動も従来のウルス ペルフォルマンテモデルと比較して25%低減。硬軟自在の走りを後押しする。
聴覚のストラテジー:チタンが紡ぐ、純化された咆哮
ウルスSEペルフォルマンテにおいて、エキゾーストサウンドは排気ガスが奏でる「音楽」であり、ブランドのアイデンティティそのもの。アクラポビッチ製の軽量チタンエキゾーストは左右のシリンダーバンクを連結する従来の「Xクロス」を廃し、完全な独立2系統ラインへと刷新された。
これにより排気パルスの干渉による乱流が消失し、シリンダーから吐き出されたままの極めて透明度の高い重低音が放たれる。消音器内に仕込まれた124Hzと128Hzのヘルムホルツ共鳴器が、耳障りな不快音(こもり音)を打ち消し、回転数の上昇とともにドラマチックなクレッシェンドを奏でる。
スポーツモードでは長く尾を引くバブリングを、コルサモードでは短く乾いた破裂音を響かせるそのソフトウェア調律は、ドライバーの脳内に直接アドレナリンを注入するだろう。
ランボルギーニとアクラポビッチが共同開発したチタンマフラーを標準装備。テールパイプは直径65mmのメインと直径76mmのセカンダリーを用いることで相乗効果を発揮し、流体力学的最適化を実現した。
コックピットという名の聖域に浸る愉悦
ドアを開ければ、そこは「Feel like a Pilot」というコンセプトに基づいた、戦闘機のコックピットを思わせる聖域だ。レヴェルト譲りの直感的なグラフィックを表示する12.3インチのHMI画面、そしてアルマイト処理されたY字型のディテールが、メカニカルな高揚感を煽る。
センターコンソールの「Tamburo(タムブーロ)」セレクターを引けば、都市を静粛に駆ける「Strada(EV)」から、未知のグラベルで圧倒的なスライドコントロールを許容する新開発の「Rally」モードまで、瞬時にこのマシンの魂を書き換えできる。
ウルスSEペルフォルマンテは既存モデルのハイパワー版ではなく、ハイブリッドという新時代のデバイスを血肉化し、高度なシャシー電子工学と流体力学で包み込んだ、自動車工学の「シンギュラリティ(技術的特異点)」を体現する孤高のスーパーSUVと評価されるべきだ。
ダイナミカ社のマイクロファイバー素材であるCorsaTexなどのサステナブル素材が使用され、ダッシュボードの中央には、新たに12.3インチのスクリーンを設置。航空機からインスピレーションを得た全く新しいメカニカルボタンパネルを採用する。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ランボルギーニ)
ライバルであるフェラーリを性能で凌駕した“奇跡のモデル” ランボルギーニ・ミウラはスーパーカー世代でなくとも、クルマ好きなら誰もが憧れる名車中の名車かと。 1966年にP400(ちなみに、PはPost[…]
フェラーリを突き放した”奇跡のモデル” ランボルギーニ・ミウラはスーパーカー世代でなくとも、クルマ好きなら誰もが憧れる名車中の名車かと。 1966年にP400(ちなみに、PはPosteriore=ミッ[…]
新幹線をブチ抜く!! 最高速度は350km/h ランボルギーニはフェラーリと並ぶ、世界最高峰のスーパースポーツカーメーカー。その最新モデルのレヴエルトは、V型12気筒エンジンとモーターを併用する、現代[…]
驚異的な走行性能と芸術性が共存 オーダーメイドのNOVITECネイキッドカーボンコンポーネントは、ランボルギーニウラカンテクニカのスポーティな外観をさらに引き立てる。スポーツカーのくさび形をより強く印[…]
ハイパフォーマンスなコーティングを自分で! 「コーティングだけに集中する」とのスローガンを持って立ち上げたコーティング剤専門ブランド「KATIBA」。「誰もが容易に作業ができ、満足できるパフォーマンス[…]
最新の関連記事(ニュース)
アセアン地域で初となる現行「アウトランダーPHEV」の投入 アウトランダーPHEVは、同社が培ってきた電動化技術と四輪制御技術を結集したフラッグシップモデル。「日常ではEV、遠出はハイブリッド」という[…]
伝統の「ASX」と名車「VR」のDNAを融合した新型BEV 三菱自動車は、オーストラリアおよびニュージーランドにおいて、鴻海精密工業(Foxconn)グループ傘下の鴻華先進科技(Foxtron)からO[…]
16歳以上なら免許不要! 4輪+外装ボディで公道を走れる Blue Jayは、道路交通法上の「特定小型原動機付自転車」の規格に対応しており、16歳以上なら運転免許が不要で、公道を走行できる。もちろん、[…]
過酷なダカール・ラリーで鍛え上げられた競技車「D7X-R」を公道仕様に昇華させた限定モデル 「ディフェンダー ダカール」のベースとなるのは、2026年のダカール・ラリー「ストッククラス」に初参戦し、1[…]
消えるライトにバタフライドアなど、新機軸を採用する次世代コンセプト 今年ブランド創立40周年を迎えたAcuraが提案するこのモデルは、普遍的な美しさと先進技術を融合させた新デザイン言語の象徴として誕生[…]
人気記事ランキング(全体)
角が丸くなったナットを切断して外す! 作業を滞らせない「ナットブレーカー(ナットスプリッター)」 自動車やバイクのメンテナンス、あるいは日常のDIY作業において、誰もが一度は直面するのが「ナットの角が[…]
普段使いしやすいミニバンサイズの優秀なベース車両 キャンピングカーとしての優れた居住性と、日本の道路事情における扱いやすさを高い次元で両立させるために、ベース車両の選択は極めて重要となる。絶大な信頼を[…]
個人移動に特化した、身近なBEVとして開発 スズキから登場した軽乗用クラスBEV「e-SKY(eスカイ)」。その第一印象を一言で表すなら、まさに「BEV版アルト」だ。 多用途性を最重視して軽乗用市場の[…]
開発・製造するのは日本のEVメーカー「EVジェネシス」 スリールオータを手掛けるのは、東京都渋谷区に本社を置くEVジェネシス株式会社だ。 同社はモビリティとパワーユニットの開発・製造を手掛ける日本のス[…]
16歳以上なら免許不要! 4輪+外装ボディで公道を走れる Blue Jayは、道路交通法上の「特定小型原動機付自転車」の規格に対応しており、16歳以上なら運転免許が不要で、公道を走行できる。もちろん、[…]
最新の投稿記事(全体)
電動化という「軛」を「武器」に変えた、サンターガタの思想 現代の自動車開発において、電動化は避けて通れない至上命題である。しかし、バッテリーの搭載に伴う「重量増」は動的パフォーマンスにとって大きな壁だ[…]
大衆車からスポーティクーペへ:カローラ派生モデルの歩み 日本全体が高度経済成長の波に乗り、マイカーの存在が人々の憧れから現実的な選択肢へと移り変わっていた1960年代後半。トヨタはファミリー層を狙った[…]
ガソリン代を気にせず旅ができる画期的な新型軽EVをベースに採用 キャンピングカーとしての使い勝手と、日々の運転での取り回しの良さを両立させるために、軽自動車サイズは圧倒的な強みを持つ。しかし、従来の軽[…]
1960年代も中盤に入ると、ヨーロッパでは長距離旅行にも使用されるグランドツアラーが流行する。その流れは北米にも。 フェアレディZ登場前のフェアレディは、のちにフェアレデーと改名されるダットサン・スポ[…]
そもそも Super-ONE BULLDOG STYLE とはどんなクルマか。 Honda 「Super-ONE BULLDOG STYLE」は、ホンダが2026年5月に発売されたホンダの新世代小型E[…]
- 1
- 2










































