
日本最大のカスタムカー・イベント「東京オートサロン」では、自動車メーカーやパーツブランドによる煌びやかなデモカーが来場者の視線を奪う一方で、自動車専門学校の学生たちが情熱を注いだ手作りのカスタムカーもイベントの名物になっている。彼らが手掛けた車両には、学生特有の自由な発想や、試行錯誤の跡が刻まれていて、既製品にはない独特の面白さが宿る。もはやオートサロンには欠かせない、大きな見どころなのだ。
●文/写真:月刊自家用車編集部(橘祐一)
3代目クラウンに存在したピックアップトラックを、クラウンで復活させたい
ここで紹介するカスタムカーは、埼玉県鴻巣市の関東自動車工業大学校の作品。パッと見では日産グロリア(Y32)のピックアップ仕様にも見える謎のクルマだ。近づいて細部を観察してみると、ドアハンドルの形状は少し違う印象を受ける。
関東自動車工業大学校の学生が手掛けた謎のピックアップモデル。ベースモデルとなったのは1996年式のクラウン(S150)。3代目クラウンにラインナップされていたピックアップモデルを、カスタムで蘇らせたいということからプロジェクトがスタートしたという。
「マスターライン」と呼ばれた商用モデルのピックアップモデルが、3代目クラウン登場に合わせて「クラウンピックアップ」に昇格。
制作した学生に詳細を尋ねたところ、このクルマの正体は1996年式の10代目クラウン、いわゆるS150系とのこと。プラットフォームを当時のマークⅡと共用し、3リッターの直列6気筒エンジン「2JZ-GE」を搭載したモデルがベースとなっているそうだ。
「エル関東ミーノ」と名付けられたこの一台は、シボレー・エルカミーノをモチーフにしたピックアップ仕様という。クラウン生誕70周年を機に、かつての3代目に存在したピックアップトラックを復活させたいという想いからプロジェクトは始動したそうだ。
「エル関東ミーノ」というモデルネームは、関東自動車工業大学校の学校名とモチーフとしたシボレー・エルカミーノからの由来。
150クラウンの面影はゼロ? 鈑金加工で魅せる変身ぶりに注目
フロントにはY32グロリアの丸目4灯グリルが移植されているが、これは歴代クラウンの意匠と1960年代のエルカミーノの雰囲気を融合させるための工夫という。形状が全く異なるフェンダーやボンネットを違和感なく接合させている手腕には驚かされる。
さらに注目して欲しいのがリヤ周りの造形。リヤドアを撤去しクォーターパネルと一体化させ、ベッドのエッジ部分もFRPに頼らず丁寧な鈑金加工で仕上げている。リヤのアオリも同様にクラウンのトランクリッドを鈑金加工し、開閉できるように取り付けてある。本職の鈑金職人が手掛けたら、いくらお金を請求されてしまうのか…、と心配してしまうレベルの仕事ぶりだ。
リヤドアを撤去しクォーターパネルと一体化させることでベット(荷台)を再現。
ベッドのエッジ部分もFRPに頼らず丁寧な鈑金加工で再現されている。
フロントフェイスにY32グロリアの丸目4灯グリルを移植。
ちなみにベッドにはウッドパネルが敷き詰められているが、前方に大きな箱を発見。実はこの中には燃料タンクが入っているのだとか。ベース車両がFRのためにフロア下に設置するのが難しく、安全基準上デフ後ろの後端部に設置することもできず、苦肉の策でこのレイアウトになったそうだ。
レイアウトの制約により、燃料タンクはベット奥に配置。
燃料タンクのボックスには改善の余地を感じるものの、頭が柔らかい学生ならではのメイクも興味深く感じてしまう。特に派手なエアロに頼らずセンス良くまとめ上げた完成度はお見事。彼らがさらに腕を磨き、次世代の自動車業界を牽引する存在になることを期待したい。
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