
●文/取材:月刊自家用車編集部(橘祐一)
今も息づく農業機械の魂、ランボルギーニ・トラクター
フェラーリと双璧をなすイタリアのスーパースポーツカーメーカー「ランボルギーニ」。創業者のフェルッチオ・ランボルギーニは大の車好きで、自らがチューニングしたフィアットでレースに参戦するほどだった。
事業で成功した彼は様々なスポーツカーを所有していたが、フェラーリ250GTのトランスミッションの不具合に悩まされ、フェラーリの創業者エンツォ・フェラーリに改良案を伝えに行ったところ、全く相手にされなかったことから、スポーツカーの製造を開始した、とされているが、真偽の程は定かではない。
ただ、フェラーリの分解、修理を行っていたところ、自らの事業で生産している車両に使用していたクラッチと全く同じものが使われており、そのパーツに何十倍もの値段で販売していたことや、メカニックの知識や経験などからビジネスとして有望だと感じ、1963年にアウトモビリ・ランボルギーニを設立した。
クルマ好きの方はご存知かもしれないが、自動車を生産する前のランボルギーニは、トラクターの生産が主力の事業だった。
フェラーリに使用されていたクラッチは、自社のトラクターと同じものだったというわけ。ちなみにランボルギーニのトラクターは現在でも生産が続けられ、日本へはコーンズ・エージー(https://www.cornesag.com/)が輸入、販売を行っている。
世界中のコレクターが狙うランボルギーニ「2Rシリーズ」
第二次世界大戦後、フェルッチオ・ランボルギーニは軍用トラックを民生向けに改造する事業を興し、1948年「ランボルギーニ・トラットリーチ」を設立し、トラクターの生産に乗り出した。
当初はモーリス製のエンジンや軍用トラックのパーツを流用した簡素なモデル・カリオカを生産したが、翌1949年には自社製の3.5L直列6気筒エンジンを搭載するL33を発売。1956年には新工場を設立して増産が始まり、1957年に22HPの空冷2気筒エンジンを搭載したLamborghinetta、1962年に発売した空冷3気筒エンジン搭載の4輪駆動モデル2Rシリーズが大ヒットとなった。
今年1月に開催された東京オートサロン2026に、ランボルギーニ製のトラクターが展示されていた。持ち込んだのは愛知の輸入車ディーラー「ウイングオート」だ。
ウイングオートのブースに展示されていたのは1966年式の2R。空冷3気筒のディーゼルエンジンを搭載する四輪駆動モデル。
この頃のトラクターにはあの闘牛マーク「ファイティング・ブル」のエンブレムは装着されていない。
マフラーにはイタリアのスポーツカーに装着されているANSA marmitte(アンサ・マルミッタ)のロゴが。
同社はイタリアでランボルギーニ・トラクターを専門にレストアしている「G.A.Motors Lamborghini tractors speciallist」と日本の代理店契約を結び、販売を行うとのこと。
トラクターでも希少なクラシックモデルは、コレクターズアイテムとして人気が高く、ヨーロッパでも高値で流通しているという。
ディーゼル燃料のポンプはBOCSH製。こちらも分解して完全オーバーホールが施されている。
左サイドにはオイルクーラー、その下はセルモーター、左下にあるのはダイナモ。ミッションやトランスファーにもランボルギーニのロゴが入る。
FIAAMの燃料レギュレータにはファイティング・ブルのエンブレムが。こちらは後から貼り付けられたステッカー。
今回展示されていたのは1962年に発売された2Rシリーズの1966年モデルで、2193ccの空冷3気筒ディーゼルエンジンが搭載されている。エンジンやミッションも全て分解され、ベアリングやシール類はもちろん、バルブ、ピストンなども交換できるパーツは全て新品に交換、補器類もオーバーホールが施されているそうだ。
シートは薄い鉄板で簡素。二人乗車できるみたい。小型特殊自動車登録になるので、原付と同じ小さなナンバーが付いている。
ダッシュボードにはタコメーターと燃料計のみ。ステアリングはシンプルな3本スポーク。
これらのモデルは、全てイタリアの工房でレストアされ、日本に輸入される。2Rの総生産台数は1925台。価格は760万円からとなっている。
日本国内での登録は小型特殊となり、原付同様に市町村への登録もでき、普通免許で運転ができる。愛好家ならずとも、興味を覚える人はいるのではなかろうか?
今回展示されたものと同モデルの2Rが実際に農地を走る当時の写真。
1970年頃のフェルッチオ・ランボルギーニ。左のスポーツカーは当時デビューしたばかりのJarama(ハラマ)GT。
現在でも販売されているランボルギーニ・トラクター。写真はフラッグシップのMACH VRT。ジウジアーロとイタルデザインの共同設計。価格は本体のみでも3000万円オーバー。
ランボルギーニが最初に発売したCarioca(カリオカ)。モーリス製のエンジンを搭載する簡素なモデルで販売は芳しくなかったようだ。
1951年に発売されたL33は自社製のディーゼルエンジンを搭載した初の量産モデル。始動時のみガソリンを使用する燃料アトマイザーは特許を取得。
1951年頃の広告。Torattore agricolo(農業用トラクター)L33 1951年モデル。シンプルながらおしゃれなデザイン。
1958年には22馬力の空冷2気筒エンジンを搭載するlamborghinietta(ランボルギネッタ)を発売。手頃な価格でヒット。
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