
9月上旬の都内において、スズキの技術戦略説明会が実施された。どのような内容だったのか? そこから見えてきた、こらからのスズキ車を予測してみたい。
●文:鈴木ケンイチ
2030年以降、スズキのクルマはどう変わる?
昨年2024年7月、スズキは「10年先を見据えた技術戦略」を発表している。全体の方針として「エネルギーを極小化させる技術」に注力することで、顧客への移動する喜びの提供と、社会課題であるカーボンニュートラルの世界実現を目指すというものだ。
具体的には「軽くて安全な車体(Sライト)」「バッテリーリーンなBEV/HEV」「効率よいICE/CNF技術」「SDVライト」「リサイクルしやすい易分解設計」の5本の技術が、その柱になるという。
そんなスズキは、2025年の新中期経営計画において「チームスズキは、生活に密着したインフラモビリティを目指す」と表明した。簡単にまとめると、2024年に発表した技術戦略に、新たに「インフラモビリティ」企業としての方針が加わることになる。
「10年先を見据えた技術戦略2025」では、従来の環境・エネルギー問題への対応に加え、人々の移動に関わる社会課題にも、スズキの技術で積極的に取り組みことが表明された。
その内容をひも解いていくと、これまでの「エネルギーを極小化させる技術」は、地球に寄り添う環境対策が中心だったが、これに加えて、新たに「本質価値極大化」という、人々に寄り添う社会課題対策がプラスされている。
この「本質価値極大化」では、従来のクルマに対する「ちょうどいい機能と価格“Easy to buy”」「わかりやすく安全な“Easy & Safety drive”」「楽しさ“Waku Waku drive”」「価格以上の価値“Hight value”」という目線に加え、「自動運搬や公共交通の利便性を高める“新モビリティ”」「人生に寄り添うモビリティ“サステナブルユース”」という2つを加えた、6つの視線で取り組むという。
電動化技術は重要だけれど、内燃機の開発も積極的に続行
今回の発表では、昨年に掲げられた「エネルギーを極小化させる技術」の開発の進捗状況が報告された。
「軽くて安全な車体(Sライト)」の目標とされるのは、現行モデルに対して、100㎏もの軽量化だ。すでに現時点で80㎏の軽量化の目途が立ったという。とはいえ、それで挑戦は終わりではなく、あくまでも100㎏の軽量化、もしくはそれ以上を目指すという。
「軽くて安全な車体(Sライト)」
「バッテリーリーンなBEV/HEV」と「効率よいICE/CNF技術」の取り組みは、高効率内燃機関と、高効率電動技術の2つが柱となる。
内燃機関は、NAエンジン/直噴ターボエンジンの開発を継続するだけでなく、ハイブリッド専用エンジンやカーボンニュートラル燃料を使うエンジンの開発も並行する。
電動技術では、「バッテリーリーン(少ないバッテリー)」をコンセプトとし、軽量な車両に向けて48Vマイルドハイブリッドとなるスーパーエネチャージ、もう少し大きな車両に向けてはシリーズハイブリッドとPHEVを開発していくとのこと。
「エネルギー極少化の進捗」
「SDVライト」は、ソフトウェア領域の技術だ。SDV(Software Defined Vehicle)とは、ソフトウェアによって機能や性能を進化させることができるクルマのこと。購入後も無線通信によってソフトウェアの更新が可能になるため、これからの主流になることは間違いないが、スズキはその先進機能についても「ちょうどよい」バランスを追求していくというのだ。そのため「ライト(right=正しい、相応しい)」という単語を使って「SDVライト」と呼ぶ。先進性を極限まで求めるのではなく、本当に必要なものだけを賢く安価に提供しようという、これまでのスズキと同じ姿勢なのだ。
「リサイクルしやすい易分解設計」は、「サーキュラーエコノミー」と「将来技術CN(カーボンネガティブ)」に呼び変えられ、樹脂リサイクルの導入とCO2削減を狙うCN(カーボンネガティブ)の研究などが行われていると報告された。
軽くて、安くて、安全。それがスズキが目指す“ちょうどいい”クルマ
では、そんなスズキの技術戦略を実用化される、これからのスズキ車の内容を考えてみたい。
最初に登場するのは日本導入されたばかりのバッテリーEV「eビターラ」だ。これは、スズキによる高効率電動技術と、SDVライトの先陣となるモデルになる。
スズキは「eビターラ」を第一陣とし、2030年までに、軽自動車セグメント、AセグメントのEVを開発し、2030年には第2世代となるバッテリーEVを登場させるという。
2026年に日本国内で発売がスタートするeビターラは、スズキによる高効率電動技術と、SDVライトの先陣となるモデルになる。
SDVライトの分野では、インテリジェントカメラにADAS機能を統合してゆき、安価でありながら有用な安全機能を実現を目指す。
「軽くて安全な車体(Sライト)」の技術開発において獲得できた部品軽量化技術は、順次量産モデルに採用を広げていき、2030年ごろには構造を進化した、新世代の軽量な軽自動車を登場させ、その後2035年に向けて、A/B/Cセグメントに拡大するそうだ。
ハイブリッド分野では高効率内燃機関と電動化の組み合わせを追求。48Vマイルドハイブリッドとなるスーパーエネチャージは2028~29年ごろ、そして2030年までにはシリーズハイブリッドとPHEVも導入する予定とのこと。
また、内燃機としては、2030年ごろに次世代の1.5リッター直噴ターボが導入される予定。その後は2035年を目処に、その次の世代のハイブリッド専用エンジンの投入も予定しているという。スズキは、2030年で57%、2035年になっても全世界の電動化率は67%程度だと予測しており、つまり、まだまだエンジン開発を続ける必要性があるというわけだ。
これらの情報をまとめると、2030年頃からスズキの軽量化技術は本格的に量産車に採用され、あわせて新パワートレインやSDVライト関連技術の採用が広がっていく。つまり、軽い車体にアフォーダブルな価格で、必要な安全性能がしっかりと担保されたクルマが、これからのスズキ車になる。
ある意味、このクルマ造りの姿勢は、今までどおりとも言えるけれど、時代が変わっても「スズキ」らしさは変わらない。これはとても嬉しいことに思えるのだ。
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