
日本中が大阪万博に沸き、高度経済成長がピークを迎えようとしていた1970年代。 三菱がモータースポーツ直系の情熱を注ぎ込んだ「コルト ギャランGTO」は、当時の1.6リッタークラス最強を誇ったDOHC「サターン」エンジンを搭載し、その圧倒的なパフォーマンスでファンを魅了した。当時人気を誇っていた「フォード・マスタング」を彷彿させる独創的な「ダックテール」スタイルは、時に「マスタングの模倣」という根拠なき批判を浴びることもあったが、それこそが当時の世界基準をいち早く取り入れた先進性の証でもあったのだ。オイルショックという時代の波に翻弄されながらも、今なお語り継がれる伝説の名車「ギャランGTO」の軌跡と、その類まれなるメカニズムの魅力を紹介しよう。
●文:往機人(月刊自家用車編集部)
三菱車としては初のスペシャルティクーペ
「ギャランGTO」が発売されたのは、“いざなぎ景気”と呼ばれる高度経済成長期のただ中だった1970年です。国民総生産が世界2位まで駆け上がり、大阪万博の活況に国民が湧いた年でもあります。
大衆セダンとしてヒットした「コルト1000」の成功をベースにして、その上位車種として、1969年に「コルト ギャラン」を発売します。新たな時代へ向けてスポーティな車種の拡充を計画していた「三菱」は、「ギャラン」のデザインをイタリアの有名デザイナー「ジョルジェット・ジウジアーロ」との競作で練り上げて、市場にも好評を得ていました。
そして、そのスポーティ路線をさらに特化させたモデルとして、デザインを一新させて新開発の高性能エンジンを搭載した「コルト ギャランGTO」をリリースしました。量産車の販売に先駆けて、前年のモーターショーでそのプロトタイプである「三菱 ギャラン GT-X」を発表して、そのスタイリングや高性能エンジンへの市場の期待値を確かめています。
その当時、高性能をウリとする他メーカーのライバル車種と比較して、性能が高いわりに価格が抑えめということで販売の結果は上々。メディアなどでの性能の評価も高いものでした。しかし、直接のライバル関係にあった「トヨタ・セリカ」よりも価格が高かったことや、その後に訪れるオイルショックの大きな波を受け、フラッグシップだったDOHCモデルは短命に終わります。
最終的には燃費の問題を排気量をアップさせることで補い、2000ccユニットを主軸にして1978年まで販売されました。
ロングノーズのプロポーション、空気抵抗を減少させ高速時の浮き上がりをおさえる機能とスポーティな美しさを調和させたダックテール、当時の国産車としては画期的な曲率50インチのサイドウィンドウによるタンブルフォームを採用したGTO。
メーターパネルは6連(左から時計、燃料系、電圧系、速度計、回転計、水温計)、さらにセンターコンソール中段に2つ(油圧計、油温計)。合計8つの丸形メーターが並ぶ。スポーティなインパネはライバル他車にも影響を与えた。
レバー操作でスライドしながらシートバックが倒れるウォークイン式を採用。また前席シートベルトは3点式。
当時の1.6リッター最強を誇った「サターン」エンジン
「ギャランGTO」には「三菱」が開発した高性能ユニットの「サターン」シリーズが搭載されました。「サターン」は土星の意味で、これ以降の「三菱」のエンジンには天体に関係する名称が与えられるようになりますが、その元祖にあたるシリーズです。
「サターン」シリーズは新時代を戦うため、環境問題への対応を盛り込みつつ、出力の向上を図っています。当初「ギャランGTO」に搭載されたのは1.6リッターSOHCの「4G32型」で、後に排気量を1.7リッッターにアップした「4G35型」が追加されますが、注目すべきはその間に追加された「MR」グレードに搭載された、DOHCの「4G32型」ユニットです。
DOHC版の「4G32型」は、SOHC版をベースにして「三菱」が独自開発したDOHCのヘッドを搭載した高性能ユニットです。76.9 x 86 mmのボア×ストロークを持つ1597ccのDOHCユニットは、大口径40φの「ソレックス」キャブレターを2基装備して、当時最高の125psを6800rpmで発揮しました。
ベースのSOHCが110psで、同時期に発売された「トヨタ・セリカ」に搭載の1.6リッターDOHC「2T-G」ユニットが115psだったので、この時代の1.6リッタークラス最強エンジンとして君臨しました。 まさに「MR=Mitsubishi Racing」のグレード名を冠するにふさわしい高性能ユニットでした。
GTO-MRに搭載されたニューサターンエンジン4G32型。排気量1597cc DOHCユニットを搭載、大口径40φのソレックスキャブレターを2基装備することで、当時クラス最強の125PSを発生した。
特徴的だったダックテールスタイルが、米国マスタングの「パクリ」疑惑も
「ギャランGTO」は、「コルト ギャラン」から引き継いだ「ダイナウェッジライン」と呼ばれる、前に行くに従って細くなるくさび形のシルエットを基本に、当時の空力のトレンドである「ダックテール」形状を採り入れた独特なフォルムが魅力でした。
しかしその特徴的なフォルムが、当時北米で大ヒットを誇っていた「フォード マスタング」に酷似しているという評判が一部で生まれ、まるでパクったかのように批判されることがありました。ちなみに「GTO」の後に発売された「トヨタ・セリカLB」も同様のダックテール形状を採用していたことから、同じ批判を受けています。
しかし、当の「マスタング」がダックテールを採用したのは1969年に発売された後期モデルからで、開発の時期は「GTO」と丸々被っていることと、当時の「三菱」は「フォード」ではなく「クライスラー」と技術提携をおこなっていたことなどを踏まえると、「マスタングをパクった」という疑惑の根拠は薄いように感じます。
「コルト ギャラン」から引き継いだ「ダイナウェッジライン」と呼ばれる、前に行くに従って細くなるくさび形のシルエットを踏襲した。
GTOの特徴のひとつは、当時トレンドであった「ダックテール」と呼ばれたテールエンドが跳ね上がったフォルム。この形状がフォード・マスタングのデザインに酷似していることから、「パクリ疑惑」を呼び起こした。
「GTO」の後に発売された「トヨタ・セリカLB」も同様のダックテール形状を採用していたことから、同じ批判を受けることになった。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(旧車FAN)
マーチR 当時の日本は、アメリカに憧れ、クルマに対するステータス意識が非常に高かった 誰もが軽自動車を始めとする小さなクルマを、胸を張って乗り回す今の日本しか知らない若者には信じられないかもしれないが[…]
かつて、クルマの性能がカタログスペックで語られる時代があった 最近では、クルマ選びでカタログに載る最高出力、つまり馬力を重視する人は少ないだろう。現代のクルマはたとえ軽自動車でも実用には十分な走りの性[…]
バブル期が生んだ”ABCトリオ”。その中で最も異彩を放った存在 オートザム・AZ-1が発売されたのは1992年10月。日本がバブル景気の余韻を残していた時代であり、自動車メーカー各社は利益を惜しみなく[…]
技術の日産としての礎を築いた名車、チェリーの誕生 日産・チェリーは、1966年に日産自動車へと吸収合併された旧プリンス自動車の優秀な技術者たちが中心となり、その情熱と先進技術を注ぎ込んで開発された歴史[…]
日本では、漫画から火がついたスーパーカーブームで認知されるようになったガルウイング 「ガルウイングドア」という言葉に、日本ほど多くの人が反応する国は、おそらくないだろう。週刊少年ジャンプ(集英社刊)で[…]
最新の関連記事(三菱)
トヨタ:マークII・チェイサー・クレスタ[X70](デビュー:1984年8月) ボディカラーは”スーパーホワイト”ほぼ一択”だ。ワインレッドの内装に、柔らかなシート表皮。どこか昭和のスナックを思い起こ[…]
“フルラインターボ”を掲げた三菱のフラッグシップだった え!? “種馬”じゃなかったの? 80年代の北米で三菱の名を轟かせた駿馬スタリオン スタリオンと聞くと、40代以下の人にとっては「ダビスタ」が思[…]
最新モデルだけが主役にあらず 自動車メーカーやディーラーが主催するキャンプイベントといえば、新車や近年に生産された高年式のミニバンやSUVばかりが集まっているものと想像しがち。三菱のスターキャンプも、[…]
大人気ピックアップトラックの荷台を極上空間へカスタマイズ キャンピングカーのベース車両として、ミニバンや商用バンが主流を占める中、本格的なアウトドア愛好家や釣り人たちから熱い視線を集めているのが、四輪[…]
接近時アンロックと降車時オートロック機能も採用 今回の一部改良では、運転支援機能の強化と利便性の向上が図られている。 まず運転支援機能「e-Assist」に、先行車発進通知が追加。信号待ちや渋滞などで[…]
人気記事ランキング(全体)
真夏の強い日差しでもこれがあれば安心! 夏の駐車で気になるのが、乗り込んだ瞬間の車内の暑さ。炎天下ではハンドルやダッシュボードが熱を持ち、エアコンが効き始めるまでしばらく待たなければならない。 もはや[…]
サンシェードを使用しても、車内の温度上昇は避けられない 連日の猛暑により、炎天下へクルマを駐車すると、わずかな時間でも車内は一気に高温となる。買い物や食事を終えて戻ってきた際、ドアを開けた瞬間に熱気が[…]
夏のドライブを快適にする「ノア・ヴォクシー専用ダッシュボードトレイ」とは ファミリーや友人と出かける夏のレジャーでは、人気のミニバンであるトヨタ「ノア」や「ヴォクシー」を利用する機会が一気に増える季節[…]
マーチR 当時の日本は、アメリカに憧れ、クルマに対するステータス意識が非常に高かった 誰もが軽自動車を始めとする小さなクルマを、胸を張って乗り回す今の日本しか知らない若者には信じられないかもしれないが[…]
丸型2灯がクラシカルでレトロな表情を演出 アメリカ西海岸のクラシックなスタイリングをモチーフにしたカスタムカーブランド「Cal’s Motor」。その中でもスズキ ジムニー系をベースとする「Beas」[…]
最新の投稿記事(全体)
頭金なしで気軽にスタート!「初期費用フリープラン」の狙いとは? これまでのKINTOの中古サブスクは、所定の申込金を支払うことで「いつ解約して中途解約金がかからない」というスタイルを基本としていた。 […]
瀬戸内海の穏やかな海や小豆島などを一望できる絶景ロケーション 「RVパーク 海星の丘」は、岡山県瀬戸内市牛窓町にある絶景が魅力のRVパークだ。見晴らしの良い高台なので、瀬戸内海の穏やかな海や小豆島など[…]
車中泊を安心して、かつ快適に楽しみたい方におすすめのRVパーク 日本RV協会が推し進めている「RVパーク」とは「より安全・安心・快適なくるま旅」をキャンピングカーなどで自動車旅行を楽しんでいるユーザー[…]
ナッツRVとのコラボから生まれた「ジョカーレ」は、実際に清木場さんが今後愛用するトランポ仕様(トランスポーター)として設計したキャンピングカー。愛車のバイクを車内に格納した状態でも、大人ふたりが余裕で[…]
なぜ子どもの存在を忘れてしまうのか? 人間の脳にある「記憶のエラー」 車内置き去り事故というと、「買い物中に子どもを車へ残した」といったケースを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、海外の調査では、死[…]
- 1
- 2


























