
●文:まるも亜希子 ●写真:澤田和久
4代目インサイトは、クロスオーバーSUVとして登場
1999年9月に誕生した初代インサイトから数えて4代目にあたる新型インサイトは、中国をメインに開発が行われたBEVとなって日本上陸を果たした。世代によって、デザインやパワートレーン、パッケージがこれほどまでに変化に富むモデルは、なかなか稀有な存在ではないだろうか。
初代は全長4mを切るサイズの2シータークーペで、軽量かつリサイクル性に優れたアルミを用いた新骨格ボディによって、軽自動車並みの車両重量820kg(5MT車)を実現。リヤに向かってすぼまっていくような空力性能を最優先に設計したスタイリングが個性的だった。搭載されたのは世界最軽量の新開発1.0LリーンバーンVTECエンジンにモーターを補助動力とした、シンプルなハイブリッド「ホンダIMAシステム」で、無段階トランスミッションのホンダマルチマチックSと5速MTが設定されていた。
2代目は2009年2月に登場。5ナンバーサイズの扱いやすいボディに、1.3Lのi-VTECエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドの5ドアハッチバックで、5人乗りの実用性も兼ね備えたパッケージが採用されるなど、プリウスとともにハイブリッド車を身近な存在へと広げた立役者となった。のちに1.5Lハイブリッドが追加されるなど、快適装備なども充実させて上質感を高めていくところに、時代の移り変わりがうかがえる。
2014年の2代目の販売終了から4年、2018年に復活した3代目は、ボディサイズが全長4.6m超と大きくなり、快適でモダンなインテリアと上質でダイナミックな走りが印象的なハイブリッドセダンとして復活した。個人的にはとてもいいクルマだと感心した記憶がある。ただ、この時期はハイブリッド車が当たり前になっていて、さらにSUV人気が大きな波となっていた中では、その魅力が伝わりきらなかったのかもしれない。日本での販売も2022年末に終了となり、モデルライフも4年と短いものになっている。
そして今回、4代目として送り出される最新インサイトは、新しい価値を提供すべく、クロスオーバーSUVと呼びたくなるようなスタイリングのBEVとして生まれ変わった。ボディサイズは全長4785mm、全幅1840mm、全高1570mmで、床下にバッテリーを収めたことを考えても最小限の拡大にとどめられ、車両重量は1770kgとBEVとしては軽量な部類に入るのではないだろうか。搭載されるバッテリーは総電力量68.8kWhで、一充電あたりの航続距離は535km(WLTCモード)となっている。
時代が求めた劇的なスタイルチェンジ
エクステリアは、写真で見ていた時よりも実車の方が格段にエッジが効いている。フロントフードの両端にくっきりと入ったラインはフロントグリルのHマークにつながり、切長のヘッドライトから縦に伸びたポジションランプもあって斬新に映る。リヤにも車幅いっぱいに横一文字に光るテールランプが配されるなど、腰高なボリューム感が特徴的なスタイルだ。
高いアイポイントがもたらす、圧倒的な見晴らし感
インテリアは、通常はブラックシート/ホワイトルーフとなるが、オンライン販売専用でホワイトシート/ホワイトルーフ仕様が用意されている。今回の試乗車はブラックシートだったが、一見してとてもスッキリとした空間で、厚みのある高反発高減衰ウレタンシートのフィット感も心地いい。中国ではディスプレイが大きければ大きいほどエライという風潮らしいが、12.8インチとほどよい大きさのディスプレイオーディオが置かれている。
どの席でも心地よい空間を追求し設計されたキャビンスペース。広いウインドウエリアと視認性の良い薄型メーターの採用により、安心の運転感覚も手に入れている。
ここまでは、シンプルでモダンなインテリアという印象だけだったのだが、よく見れば助手席との隔たりがないのでサイドウォークスルーもできる。ステアリングは細めの楕円形、その先に見える9.4インチのデジタルグラフィックメーターは、ダッシュボードにほとんどはみ出さない薄型なので、必要な情報を表示しつつヘッドアップディスプレイと合わせて、とても見やすくなっていることに感心させられる。
薄型のデジタルグラフィックメーターを採用したことで、ダッシュボード上もすっきり。
12.8インチディスプレーオーディオは標準装備。車両機能の操作の多くは、タッチ操作で行われる。
荷室はカーゴリッドで上下に区切れる2段構造。シャープなスタイリングながら、大容量設計を実現している。
ホンダらしい、走りの爽快さも宿る
走り出すと、しっかりとした接地感がありながら加速はスッとなめらかで、息継ぎなく伸びやかな加速が気持ちいい。ボディ剛性の見直しやスプリングレートやダンパー減衰力の最適化が効いているのだろうが、アジャイルハンドリングアシストの効果も高く、全体として安定感がある。
それでいて路面の継ぎ目などでは、ドスンと入力させておいて力技で収めることができるような、おおらかさもあるので、高速コーナリングでもグイグイ加速してくれる。ベタっと路面に張り付くようなダイナミックな感覚は、運転していて楽しくなる。ちなみに「SPORT」モードにすると、アクティブサウンドコントロールで音が聞こえてくるが、プレリュードやSuper-ONEのそれとはまったく異なる音ということも面白い。
ディスプレイにアロマのアイコンがあり、タップすると3種類の香りが選べるようになっている。これは、あらかじめ運転席のドアを開けたところに筒状の専用アロマディフューザーがセットできるようになっており、工場出荷時は1種類のセットだが販売店で全6種類を用意しているという。エアコンの風とともにほのかな香りで満たされ、気分によって変えられるのは楽しかった。もちろん、オフにもできる。
後席でも試乗すると、スペースは十分に広くリクライニングも26度まで倒せるので、ゆったりとした時間を過ごすことができる。ラゲッジはフロアが2段階に変えられ、ゴルグバッグ3個は積載可能な大容量。サイドには小物収納スペースもあり、使い勝手は申し分なさそうだ。
こうして見てくると、新型インサイトは初代のように“ひとクセある”個性と、2代目のような実用性、そして3代目のようなダイナミックさをすべて受け継いだ、バランスの良さを実感できるBEVになっている。
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